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かえるの王様
かえるのおうさま
原題DER FROSCHKONIG ODER DER EISERNE HEINRICH
著者
翻訳者楠山 正雄
文字遣い新字新仮名
底本 「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」 小峰書店
1949(昭和24)年2月20日
入力者大久保ゆう
校正者浅原庸子
公開 / 更新2004-05-11 / 2014-09-18
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

         一

 むかしむかし、たれのどんなのぞみでも、おもうようにかなったときのことでございます。
 あるところに、ひとりの王さまがありました。その王さまには、うつくしいおひめさまが、たくさんありました。そのなかでも、いちばん下のおひめさまは、それはそれはうつくしい方で、世の中のことは、なんでも、見て知っていらっしゃるお日さまでさえ、まいにちてらしてみて、そのたんびにびっくりなさるほどでした。
 さて、この王さまのお城のちかくに、こんもりふかくしげった森があって、その森のなかに一本あるふるいぼだいじゅの木の下に、きれいな泉が、こんこんとふきだしていました。あつい夏の日ざかりに、おひめさまは、よくその森へ出かけて行って、泉のそばにこしをおろしてやすみました。そして、たいくつすると、金のまりを出して、それをたかくなげては、手でうけとったりして、それをなによりおもしろいあそびにしていました。
 ある日、おひめさまは、この森にきて、いつものようにすきなまりなげをして、あそんでいるうち、ついまりが手からそれておちて、泉のなかへころころ、ころげこんでしまいました。おひめさまはびっくりして、そのまりのゆくえをながめていましたが、まりは水のなかにしずんだまま、わからなくなってしまいました。泉はとてもふかくて、のぞいてものぞいても、底はみえません。
 おひめさまは、かなしくなって泣きだしました。するうちに、だんだん大きな声になって、おんおん泣きつづけるうち、じぶんでじぶんをどうしていいか、わからなくなってしまいました。
 おひめさまが、そんなふうに泣きかなしんでいますと、どこからか、こうおひめさまによびかける声がしました。
「おひめさま。どうなすったの、おひめさま。そんなに泣くと、石だって、おかわいそうだと泣きますよ。」
 おや、とおもって、おひめさまは、声のするほうをみまわしました。そこに、一ぴきのかえるが、ぶよぶよふくれて、いやらしいあたまを水のなかからつきだして、こちらをみていました。
「ああ、水のなかのぬるぬるぴっちゃりさん、おまえだったの、いま、なにかいったのは。」と、おひめさまは、なみだをふきながらいいました。「あたしの泣いているのはね、金のまりを泉のなかにおとしてしまったからよ。」
「もう泣かないでいらっしゃい。わたしがいいようにしてあげますからね。」
「じゃあ、まりをみつけてくれるっていうの。」
「ええ、みつけてあげましょう。でも、まりをみつけて来てあげたら、なにをおれいにくださいますか。」
「かわいいかえるさん。」と、おひめさまはいいました。「おまえのほしいものなら、なんでもあげてよ。あたしのきているきものでも、光るしんじゅでも、きれいな宝石でも、それから金のかんむりでも。」
「いいえ、わたしはそんなものがほしくはないのです。けれど、もしかあなたが…

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