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小夜啼鳥
さよなきどり
作品ID42381
原題NATTERGALEN
著者アンデルセン ハンス・クリスチャン
翻訳者楠山 正雄
文字遣い新字新仮名
底本 「新訳アンデルセン童話集 第二巻」 同和春秋社
1955(昭和30)年7月15日
入力者大久保ゆう
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2005-07-28 / 2014-09-18
長さの目安約 26 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#挿絵]
 みなさん、よくごぞんじのように、シナでは、皇帝はシナ人で、またそのおそばづかえのひとたちも、シナ人です。
 さて、このお話は、だいぶ昔のことなのですがそれだけに、たれもわすれてしまわないうち、きいておくねうちもあろうというものです。
 ところで、そのシナの皇帝の御殿というのは、どこもかしこも、みごとな、せとものずくめでして、それこそ、世界一きらびやかなものでした。
 なにしろ、とても大したお金をかけて、ぜいたくにできているかわり、こわれやすくて、うっかりさわると、あぶないので、よほどきをつけてそのそばをとおらなければなりません。御苑にはまた、およそめずらしい、かわり種の花ばかりさいていました。なかでもうつくしい花には、そばをとおるものが、いやでもそれにきのつくように、りりりといいねになるぎんのすずがつけてありました。ほんとうに、皇帝の御苑は、なにからなにまでじょうずにくふうがこらしてあって、それに、はてしなくひろいので、おかかえの庭作でも、いったいどこがさかいなのか、よくはわからないくらいでした。なんでもかまわずどこまでもあるいて行くと、りっぱな林にでました。そこはたかい木立があって、そのむこうに、ふかいみずうみをたたえていました。林をではずれるとすぐ水で、そこまで木のえだがのびているみぎわちかく、帆をかけたまま、大きなふねをこぎよせることもできました。
 さて、この林のなかに、うつくしいこえでうたう、一羽のさよなきどりがすんでいましたが、そのなきごえがいかにもいいので、日びのいとなみにおわれているまずしい漁師ですらも、晩、網をあげにでていって、ふと、このことりのうたが耳にはいると、ついたちどまって、ききほれてしまいました。
「どうもたまらない。なんていいこえなんだ。」と、漁師はいいましたが、やがてしごとにかかると、それなり、さよなきどりのこともわすれていました。でもつぎの晩、さよなきどりのうたっているところへ、漁師がまた網にでてきました。そうして、またおなじことをいいました。
「どうもたまらない、なんていいこえなんだ。」
 せかいじゅうのくにぐにから、旅行者が皇帝のみやこにやってきました。そうして、皇帝の御殿と御苑のりっぱなのにかんしんしましたが、やはり、このさよなきどりのうたをきくと、口をそろえて、
「どうもこれがいっとうだな。」といいました。で、旅行者たちは、国にかえりますと、まずことりのはなしをしました。学者たちは、その都と御殿と御苑のことをいろいろと本にかきました。でもさよなきどりのことはけっして忘れないどころか、この国いちばんはこれだときめてしまいました。それから、詩のつくれるひとたちは、深いみずうみのほとりの林にうたう、さよなきどりのことばかりを、この上ないうつくしい詩につくりました。
 こういう本は、世界じゅうひろまって、やがて…

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