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野のはくちょう
ののはくちょう
原題DE VILDE SVANER
著者
翻訳者楠山 正雄
文字遣い新字新仮名
底本 「新訳アンデルセン童話集第一巻」 同和春秋社
1955(昭和30)年7月20日
入力者大久保ゆう
校正者秋鹿
公開 / 更新2006-03-04 / 2014-09-18
長さの目安約 42 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#挿絵]
 ここからは、はるかな国、冬がくるとつばめがとんで行くとおい国に、ひとりの王さまがありました。王さまには十一人のむすこと、エリーザというむすめがありました。十一人の男のきょうだいたちは、みんな王子で、胸に星のしるしをつけ、腰に剣をつるして、学校にかよいました。金のせきばんの上に、ダイヤモンドの石筆で字をかいて、本でよんだことは、そばからあんしょうしました。
 この男の子たちが王子だということは、たれにもすぐわかりました。いもうとのエリーザは、鏡ガラスのちいさな腰掛に腰をかけて、ねだんにしたらこの王国の半分ぐらいもねうちのある絵本をみていました。
 ああ、このこどもたちはまったくしあわせでした。でもものごとはいつでもおなじようにはいかないものです。
 この国のこらずの王さまであったおとうさまは、わるいお妃と結婚なさいました。このお妃がまるでこどもたちをかわいがらないことは、もうはじめてあったその日からわかりました。ご殿じゅうこぞって、たいそうなお祝の宴会がありました。こどもたちは「お客さまごっこ」をしてあそんでいました。でも、いつもしていたように、こどもたちはお菓子や焼きりんごをたくさんいただくことができませんでした。そのかわりにお茶わんのなかに砂を入れて、それをごちそうにしておあそびといいつけられました。
 その次の週には、お妃はちいちゃないもうと姫のエリーザを、いなかへ連れていって、お百姓の夫婦にあずけました。そうしてまもなくお妃はかえって来て、こんどは王子たちのことでいろいろありもしないことを、王さまにいいつけました。王さまも、それでもう王子たちをおかまいにならなくなりました。
「どこの世界へでもとんでいって、おまえたち、じぶんでたべていくがいい。」と、わるいお妃はいいました。「声のでない大きな鳥にでもなって、とんでいっておしまい。」
 でも、さすがにお妃ののろったほどのひどいことにも、なりませんでした。王子たちは十一羽のみごとな野の白鳥になったのです。きみょうななき声をたてて、このはくちょうたちは、ご殿の窓をぬけて、おにわを越して、森を越して、とんでいってしまいました。
 さて、夜のすっかり明けきらないまえ、はくちょうたちは、妹のエリーザが、百姓家のへやのなかで眠っているところへ来ました。ここまできて、はくちょうたちは屋根の上をとびまわって、ながい首をまげて、羽根をばたばたやりました。でも、たれもその声をきいたものもなければ、その姿をみたものもありませんでした。はくちょうたちは、しかたがないので、また、どこまでもとんでいきました。上へ上へと、雲のなかまでとんでいきました。とおくとおく、ひろい世界のはてまでもとんでいきました。やがて、海ばたまでずっとつづいている大きなくろい森のなかまでも、はいっていきました。
 かわいそうに、ちいさいエリーザ…

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