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ジャン・クリストフ
ジャン・クリストフ
副題07 第五巻 広場の市
07 だいごかん ひろばのいち
原題JEAN-CHRISTOPHE
著者
翻訳者豊島 与志雄
文字遣い新字新仮名
底本 「ジャン・クリストフ(二)」 岩波文庫、岩波書店
1986(昭和61)年7月16日
入力者tatsuki
校正者伊藤時也
公開 / 更新2008-03-11 / 2014-09-21
長さの目安約 363 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

     著者とその影との対話

予 まさしく乗るか反るかの仕事だね、クリストフ。お前は俺を全世界と喧嘩させるつもりだったのか。
クリストフ まあ驚いた様子をするな。最初からお前は、どこへ俺が連れてゆくかを知ってたはずだ。
予 お前はあまり多くのことを非難する。敵を怒らし、友だちに迷惑をかける。たとえば、いい家庭に何か悪いことが起こっても、そんな噂はしないのがよい趣味だということを、お前は知らないのか。
クリストフ しかたがないさ。俺には趣味なんかありはしない。
予 それは俺も知っている。お前はヒューロン人みたいだ。粗野な男だ。奴らはお前を、全世界の敵だとするだろう。すでにお前はドイツで、反ドイツ主義者だとの評判を得ている。フランスでは、反フランス主義者、もしくは――この方がもっと重大だが――反ユダヤ主義者だとの評判を得るだろう。気をつけるがいい。ユダヤ人のことは一言も言うなよ……。

汝は彼らより恩を受けたれば、その悪口を言わん術なし……。

クリストフ いいことも悪いことも、考えてることは皆、なぜ言っていけないのだ。
予 お前はとくに悪口を言いたがる。
クリストフ 賛辞はあとから来るんだ。キリスト教徒によりもユダヤ人に、いっそう遠慮をしなければならないという法があるものか。彼らに俺が十分のことをしてやるとすれば、それは彼らにそれだけの値打ちがあるからだ。俺は彼らに名誉の地位を与えてやらなければならない。なぜなら彼らは、わが西欧の先頭に立ってそれを占めたからだ。西欧では今光が消えかかり、彼らのある者はわが文明を滅ぼそうとしかけている。しかし俺は彼らのうちに、われわれの思想行為の宝の一つたるべき者らがあることを、知らないではない。この民族のうちには、まだ偉大なものがあることを、俺は知っている。彼らの多くがもっている、献身の力、傲慢なる冷静、最善にたいする愛と欲求、不撓の精力、世に隠れたる執拗な労苦、それらをことごとく俺は知っている。彼らのうちに一つの神があることを、俺は知っている。それゆえに俺は、その神を否定した奴らを、堕落的な成功と卑しい幸福とのために、彼ら民衆の運動を裏切る奴らを、憎んでいるのだ。そういう奴らを攻撃するのは、奴らに対抗して彼ら民衆の味方をすることになるのだ。腐敗したフランス人どもを攻撃することによって、フランスを保護するのと、ちょうど同じことだ。
予 おい、お前は自分と無関係なことに干渉してるというものだ。スガナレルの細君のことを思い出すがいい。やたらに打たれるようなことばかりしたがったじゃないか。「木と指との間に……。」イスラエルの問題は、われわれに関したことじゃない。そしてフランスの問題の方は、フランスはマルティーヌのようなもので、やりこめられようと平気だ。しかしやりこめられたと人に言われることを許さない。
クリストフ それでも、真実…

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