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レ・ミゼラブル
レ・ミゼラブル
副題06 第三部 マリユス
06 だいさんぶ マリユス
著者
翻訳者豊島 与志雄
文字遣い新字新仮名
底本 「レ・ミゼラブル(三)」 岩波書店
1987(昭和62)年5月18日
「レ・ミゼラブル(二)」 岩波書店
1987(昭和62)年4月16日
入力者tatsuki
校正者小林繁雄、門田裕志
公開 / 更新2007-03-02 / 2014-09-21
長さの目安約 472 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

第一編 パリーの微分子




一 小人間

 パリーは一つの子供を持ち、森は一つの小鳥を持っている。その小鳥を雀と言い、その子供を浮浪少年と言う。
 パリーと少年、一つは坩堝であり一つは曙であるこの二つの観念をこね合わし、この二つの火花をうち合わしてみると、それから一つの小さな存在がほとばしり出る。ホムンチオ(小人)とプラウツスは言うであろう。
 この小さな人間は、至って快活である。彼らは毎日の食事もしていない、しかも気が向けば毎晩興行物を見に行く。肌にはシャツもつけず、足には靴もはかず、身をおおう屋根もない。まったくそういうものを持たない空飛ぶ蠅のようである。七歳から十三歳までで、隊を組んで生活し、街路を歩き回り、戸外に宿り、踵の下までくる親譲りの古いズボンをはき、耳まで隠れてしまうほかの親父からの古帽子をかぶり、縁の黄色くなった一筋きりのズボンつりをつけ、駆け回り、待ち伏せし、獲物をさがし回り、時間を浪費し、パイプをくゆらし、暴言を吐き、酒場に入りびたり、盗人と知り合い、女とふざけ、隠語を用い、卑猥な歌を歌い、しかもその心のうちには何らの悪もないのである。その魂のうちにあるものは、一つの真珠たる潔白である。真珠は泥の中にあってもとけ去らぬ。人が年少である間は、神も彼が潔白ならんことを欲する。
 もし広大なる都市に向かって、「あれは何だ?」と尋ぬるならば、都市は答えるだろう、「あれは私の子供だ。」

二 その特徴の若干

 パリーの浮浪少年は、小なる巨人である。
 何ら誇張もなくありのままを言えば、この溝の中の天使は時としてシャツを持ってることもあるが、それもただ一枚きりである。時としては靴を持ってることもあるが、それも底のすり切れたものである。時には住居を持っていて、母親がいるのでそれを愛することもあるが、しかし自由だからと言って街路の方を好む。独特の遊びがあり、独特の悪戯がある。そしてその根本は中流市民に対する憎悪である。また独特な比喩がある。死ぬことを、たんぽぽを根から食うという。また独特な仕事を持っている。辻馬車を連れてき、馬車の踏み台をおろし、豪雨のおりに街路の一方から他方へ人を渡してやっていわゆる橋商売をなし、フランス民衆のためになされた当局者の演説をふれ回り、舗石の間を掃除する。また独特の貨幣を持っている。往来に落ちてる種々な金物でできてる不思議な貨幣で、ぼろと言われていて、その小さな浮浪少年の仲間にごく規則だった一定の流通をする。
 最後に、彼らは独特な動物を持っていて、すみずみでそれを熱心に観察する。臙脂虫、油虫、足長蜘蛛、二つの角のある尾を曲げて人をおびやかす黒い昆虫の「鬼」。また物語にあるような怪物をも持っている。腹に鱗があるけれど、蜥蜴でもなく、背中に疣があるけれど、蟇でもなく、古い石灰竈やかわいた水溜などの中に住んでいて、まっ黒…

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