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コーカサスの禿鷹
コーカサスのはげたか
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「豊島与志雄童話集」 海鳥社
1990(平成2)年11月27日
入力者kompass
校正者小林繁雄、門田裕志
公開 / 更新2006-07-18 / 2014-09-18
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

      一

 コーカサスに、一匹の大きな禿鷹がいました。仲間の者達と一緒に、高い山の頂に住んで、小鳥を取って食べたり、麓の方へ下りてきて、死んだ獣の肉をあさったりしていましたが、ある時ふと、ひょんな考えを起こしました。
「自分は仲間の誰よりも、体が大きく、力が強く、知恵もあるので、みんなから尊敬されている。そこで一つ奮発して、みんなよりも立派な住居をこしらえて、王様然と構えこんでいなくちゃなるまい」
 そして彼はいろいろ考えた末、国中の一番高い山の頂に、立派な岩屋を探して、そこに住居を定めようとしました。
 ところがいよいよとなると、どれが国中で一番高い山か、さらに見当がつきませんでした。一番高そうな山の上に立って、四方を見渡しますと、向こうの山の方がもっと高そうに思われますし、その山の上へ飛んでゆくと、また向こうにもっと高そうな山が見えます。そしてあちらこちらと、山から山へ飛び移ってるうちに、体が疲れてくるし、気持ちはいらいらしてくるし、どれが一番高い山だかさっぱりわからなくなりました。
「こんなじゃとてもわかりっこない。誰かに聞かなくちゃ駄目だ。そこで、禿鷹のことなら俺達禿鷹が一番よく知ってるし、山のことなら山自身が一番よく知ってるはずだから……」
 そう思いついて彼は、ある山のうえに飛んでいって、大きな岩の上にとまって、山の霊にたずねてみました。
「もしもし、ちょっとおたずねしますが、国中で一番高い山はどの山でしょうか」
 すると、岩の中の方から大きな声がしました。
「俺だ」
 禿鷹はびっくりしました。これが国中で一番高い山だったのかしら、と思ってあたりを見渡しますと、どうも向こうの山の方が高そうな気がします。それでなおも一つの山の霊に聞いてみたくなって、向こうの山へ飛んでゆきました。
「もしもし、国中で一番高い山はどの山でしょうか」
 すると、その山の霊が岩の中から答えました。
「俺だ」
 禿鷹はまたびっくりしました。そして、も一つ他の山にたずねてみようと思って、その方へ飛んでゆきました。
「もしもし、国中で一番高い山はどの山でしょうか」
「俺だ」
 そこで禿鷹はなお迷いました。そして方々の山へ行ってはたずねましたが、どの山もみな国中で一番高いのは俺だというのです。
 さあ禿鷹は困ってしまいました。山自身に聞いてもわからないとすれば……。その時ふと彼は、山の神のことを思いつきました。国中の山の霊を支配してる山の神に聞けば、きっとわかるにちがいない。「だが……まてよ」と禿鷹は考えました。「国中で一番高い山に巣を作りたいなどと、明らさまに言えば、山の神は俺を生意気だと思って、教えてくれないかも知れない。これは一つだまかして聞く方がよさそうだ」
 彼は一人うなずいてから、山間の森の中に山の神を訪れました。
「いつも御機嫌よろしゅうて、結構でございます…

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