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漁師の冒険
りょうしのぼうけん
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一一巻 楠山正雄 沖野岩三郎 宮原晃一郎集」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「赤い鳥」1920(大正9)年11月
入力者鈴木厚司
校正者noriko saito
公開 / 更新2004-09-15 / 2014-09-18
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 いつの頃でしたか、九州の果の或海岸に、仙蔵と次郎作といふ二人の漁師がをりました。
 或日二人はいつものとほり小さな舟にのつて沖へ漁に出ますと大風が吹いて、とほくへ流されました。けれども運よく舟も沈まず、怪我もしないで、とある島へ流れつきました。二人はお腹がすいてゐるものですから、早く人家のあるところへ出て、御飯をたべさして貰はうと、奥の方へあるいて参りますと、そこに畑があつて、大きな西瓜が生つてゐるのを見付けました。ところがその西瓜が仙蔵も次郎作もまだ見たこともない程のものでした。それは酒を拵らへるときの、大樽ほどもありました。二人は大へん喫驚しました。けれども何しろ、もう一足も歩けぬ程お腹がすいてゐるときですから、直ぐにもつて来た小刀で、それに穴をあけて、中の赤い肉を切りとつて喰べ始めました。すると余りにおいしいので、段々喰べていくうちに、とう/\体とも西瓜の中に入つてしまひました。そしてお腹が充分にみちたので、いゝ気持になつて、二人とも歌を唄つてをりました。

 こちらはその大きな西瓜をうゑた人達です。その人達は奈良の大仏を二つも合した程の巨人でありました。今はそんな大きな人間は世界にゐないことになつてゐますけれども、昔の人にはそんな巨人のゐたことが本当に思はれてをりました。
 その巨人が、孫をつれて、畑を見に来ますと、自分の西瓜に穴があいて、そのなかゝら美しい声で歌が聞えました。
「おや変だぞ。」と、巨人は二人の入つてゐる西瓜に目をつけて申しました、「これは西瓜に虫がついた。困つたことをした。」
「ほんとに虫がついたね、おぢいさん、でもいゝ声の虫だから、取つて帰つて、飼ひませう。」
 孫の巨人はさう言ひながら、指を穴に入れて、仙蔵と次郎作とを摘み出し、掌にのせました。驚いたのは二人です。たゞもう恐ろしさに小さく縮み上つてゐると、孫の巨人は、丁度私共が、バツタか蜻蛉をおもちやにするやうに、二人の頭をつまんでみたり背中を指でなでてみたりするのでした。
「こら/\虫よ、」と、孫は二人が歌を止めたので、申しました。「唄へ/\。」
 二人は恐ろしいので、声も碌に出ません。けれども唄はないと孫が太い指で頭をつまんでふりまはしますから仕方がありません。一生懸命に唄ひました。
「本当に悧巧な虫だな。」と、おぢいさんの巨人は申しました。「ちやんとこつちのいふことが分るんだ。大事にして飼つて置かうね。手荒いことをして、つまみつぶしちやいけないよ。」
 仙蔵と次郎作は、巨人達から、とう/\虫と見られて、その家につれていかれました。孫の巨人は、これは本当に悧巧で、美い声の虫だから、今晩は抱いてねるのだと、二人を寝床の中に入れました。
 困つたのは二人の漁師でした。
「仙蔵。」と、弱虫で少々馬鹿な次郎作は泣き声を出して申しました。「どうしたらいゝだらうかね。しまひにや喰はれて…

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