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霧陰伊香保湯煙
きりがくれいかほのゆけぶり
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「圓朝全集 巻の三」 近代文芸資料複刻叢書、世界文庫
1963(昭和38)年8月10日
入力者小林繁雄
校正者門田裕志、仙酔ゑびす
公開 / 更新2009-08-10 / 2014-09-21
長さの目安約 236 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

        一

 偖、お話も次第に申し尽し、種切れに相成りましたから、何か好い種を買出したいと存じまして、或お方のお供を幸い磯部へ参り、それから伊香保の方へまわり、遊歩かた/″\実地を調べて参りました伊香保土産のお話で、霧隠伊香保湯煙と云う標題に致してお聴きに入れます。これは実際有りましたお話でございます。彼の辺は追々と養蚕が盛に成りましたが、是は日本第一の鴻益で、茶と生糸の毎年の産額は実に夥しい事でございます。外国人も大して之を買入れまする事で、現に昨年などは、外国へ二千万円から輸出したと云いますが、追々御勉強でございまして、あの辺は山を開墾してだん/″\に桑畑にいたします。それにまた蚕卵紙を蚕に仕立てます故、丹精はなか/\容易なものでは有りませんが、此の程は大分養蚕が盛で、田舎は賑やかでございます。養蚕を余り致しません処は足利の方でございます。此処はまた機場でございまして、重に織物ばかり致します。高機を並べまして、機織女の五十人も百人も居りまして、並んで機を織って居ります。機織女は何程位な賃銀を取るものだと聞いて見ると、実に僅かな賃でございます。機織女を抱えますのに二種有ります。一を反織と云い、一を年季と申します。反織の方は織賃銀何円に付いて何反織ると云う約定で、凡て其の織る人の熟不熟、又勤惰によって定め置くものでござります。勉強次第で主人の方でも給金を増すと云う、兎に角宅へ置いて其の者の腕前を見定めてから給料の約束を致します。又一つの年季と申しますると、一年も三年も或は七年も八年もございますが、何十円と定めまして、其の内前金を遣ります。皆手金の前借が有ります。それで夏冬の仕着を雇主より与える物でございます。これは機織女を雇入れます時に、主人方へ雇人請状を出しますので、若い方が機に光沢が有ってよいと云うので、十四五か十七八あたりの処が中々上手に織りますもので、六百三十五匁、ちっと木綿にきぬ糸が這入りまして七十寸位だと申します。其の中で二崩しなどと云う細かい縞は、余程手間が掛ります。一機四反半掛に致しましても、これを織り上げて一円の賃を取りまするのは、中々容易な事ではございません。機織場の後に明りとりの窓が開いて居ります。足利辺では大概これを東に開けますから、何故かと聞きましたら、夏は東から這入りまするは冷風だと云います。依って東へ窓を開け、之をざまと云います。夏季蚊燻を致します。此の蚊燻の事を、彼地ではくすべと申します。雨が降ったり暗かったりすると、誠に織り辛いと申しますが、何か唄をうたわなければ退屈致します処から、機織唄がございます。大きな声を出して見えもなく皆唄って居ります様子は見て居りますると中々面白いもので、「機が織りたや織神さまと、何卒日機の織れるよに」と云う唄が有ります。また小倉織と云う織方の唄は少し違って居ります。「可愛い男に新田山通…

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