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スカンヂナヴィア文学概観
スカンジナヴィアぶんがくがいかん
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「北歐の散策」 生活社
1943(昭和18)年3月20日
入力者鈴木厚司
校正者土屋隆
公開 / 更新2008-04-15 / 2014-09-21
長さの目安約 32 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

       一、スカンヂナヴィア限界
 私は自分が興味を以て研究してゐるスカンヂナヴィア文學 Skandinaviske litteratur について、御話することを甚だ欣快に存じます。
 スカンヂナヴィア文學といふ名稱は地理學で申すスカンヂナヴィア半島の文學といふのでなく、もつと廣い範圍のもので、言語學的意味を有つてゐることを豫め御承知願つて置かなければなりません。即ち、ノルウェイ、スウェデンの兩國と、デンマルクは勿論のこと、イスランド、及びスウェデン語を話すフィンランドの一部分のことであります。普通にスカンヂナヴィア文學のことを北歐文學と申しますが、此の場合に於ける北歐といふ言葉の範圍はきはめて曖昧で、屡々ロシア、ドイツ、オランダ、ベルギイの如きですらも、北歐とよばれることがあります。それで私はわざと北歐といはずに、文學が基礎として立つ言葉を同じくし、地理的に近接し、歴史、民族、風習の上からも、非常に密接な關係にある北歐の諸國をスカンヂナヴィアの名の下に、引つ括るめて、お話しようと存じます。然し、十三世紀の頃から始まつて、現在まで約八百年に亘るスカンヂナヴィア文學の全貌を、此處に十分に申述べることは、たうてい不可能でありますから、ここでは傍系のフインランドや中世からのイスランドは措きまして、主要な丁、諾、瑞の三國について、ごく大掴みに、申上げることに致しませう。
       二、一貫せるロマン主義
 スカンヂナヴィア文學は英吉利また獨逸の文學とその發達の經路を殆んど同じくしてゐる。即ち、最初に神話、英雄傳説が歌の形であらはれ、次ぎにキリスト教が渡來して、それをキリスト教的に變化させ、同時にラテン文化を傳播する。その次にはフランス古典文學が支配し、やがて宗教改革が起つて、國語及び國民傳統の尊重となり、ローマン主義の勃興となり、自然主義の隆盛となり、それが終つて、新ローマン主義、農民文學、郷土文學或は勞働文學が起つたといふ順序で發達するといふのであります。然しフゥツリズム Futurism・ダダイズム Dadaism・シュルレアリズム Surr[#挿絵]alisme・或は表現主義 Expressionismus. 即物主義 Neue-sachlichkeit といふやうな、ひどく風變りのものは、スカンヂナヴィア文學には殆んどありませぬ。スカンヂナヴィア文學の主流はどこまでもローマン主義であるやうに思はれます。
       三、古代文學の共通
 さて、デンマルク、ノルウェイ、スウェデン三國の古代文學はいづれもみな共通で、古代ノルウェイ。イスランド文學といふ總括した名稱でよぶことができます。言葉を換へて申しますと、昔イスランドに渡つたノルウェイ人が、そこに古い原形のまゝに保存した文學、またその後そこ及びノルウェイ本土で發達した文學であります。このイスラン…

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