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新学期行進曲
しんがっきこうしんきょく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 第7巻 地球要塞」 三一書房
1990(平成2)年4月30日
初出「家庭コント 新学期行進曲」JOAKラジオドラマ台本、1938(昭和13)年9月30日放送
入力者土屋隆
校正者田中哲郎
公開 / 更新2005-05-10 / 2014-09-18
長さの目安約 20 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   第一景 勉強組合


△騒然たる中学校の教室の音響――「やい亀井」「なんだ松岡」「随分黒いぞ」「黒くておかしいかい。やい白ん坊」「なんだ黒ん坊」などの早い会話のやりとりを遠く聞かせる。それに交って、床をドタ靴でふみならしながら、愛国行進曲を口笛で吹いているのが聞える。
△始業のサイレンの音――更に遠くに聞える。
△扉をドーンとついて、また新たに教室へとびこんで来る生徒の靴音、鞄を投げつける音、それに交って「あれ、おれの席はどこだ」「おい吉田吉田こっちだこっちだ」「やあ変だなあ、こんなところに僕の机が……」などと急口調の話声。
生徒蝦原 あっ先生だ……。
△扉がガチャリとしまる音
先生 えっへん
一同、たちまちしーんと静粛になる(間)
先生 (出席簿をバタバタ開けたりしめたりしながら)ああア皆さん。このクラスは相変らず元気者ぞろいじゃのう。夏休み中は、さぞやさぞ楽しいことであったろう。先生などは夏休み中、すこし気にかかることがあって(といってはっと気がつき)ああむにゃむにゃ、えっへん。――ああア、そこで新学期の始めに一つ、クラス全体に苦言を呈しておく。
△生徒大勢がガヤガヤと不安の気配
先生 ああア、どうじゃ、このクラスはなかなか元気者揃いであり、また中々無邪気者揃いであって、先生はよいクラスじゃと思っとるが、ああア、一つ感心せんことがある。それは――それはじゃ、近来宿題をやらせても大分出来が悪いし、試験をやっても、これまた答案の出来が悪い。どうもこれは困った傾向じゃ。
生徒一同。しーんとしている(間)
先生 (励声一番)これ思うに、このクラスの皆が戦争ごっこに夢中になっていて、勉強の方をとんと怠っているからじゃと思う。戦争ごっこ、必ずしも悪くはない。しかし勉強を第一とせんけりゃならん。お前たちはまずなによりも生徒であるのじゃからな。出征兵士は敵兵をたおすのが任務であるごとく、生徒は勉強するのが任務じゃ。お前たち第二国民が今勉強を怠って居ると次の時代に於いてこれがどんな風に響くと思うか。次の時代に戦争が起ったときにゃ、不勉強のおかげで敵軍を撃破するに足る優秀な戦車が出来なかったり、また優秀な飛行機が作れなかったりして、べそをかかんけりゃならん。つまり学問の力で外国に負けるぞ。まことに由々しき一大事ではないか。
廊下にあわただしき靴音、扉ひらく音。
給仕 (息をはずませながら)あ、大山先生。お宅から電話です。すぐお帰り下さい、ですって。
先生 (おどろき)ええっ、な、な、なにごとか起ったというのか。
給仕 先生のお宅で赤ちゃんが生れそうですって。
生徒一同、うわーっと喚声をあげ机を叩き床を踏みならす。
先生 えっ。とうとう始まったか。それはまことに由々しき一大事。
生徒一同うわーっ。
先生 これこれ(と生徒を制しながら)皆よろこんでくれ、先生のところでは十…

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