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グロリア・スコット号
グロリア・スコットごう
原題The "Gloria Scott"
著者
翻訳者三上 於菟吉
文字遣い新字新仮名
底本 「世界探偵小説全集 第三卷 シヤーロツク・ホームズの記憶」 平凡社
1930(昭和5)年2月5日
入力者京都大学電子テクスト研究会入力班
校正者京都大学電子テクスト研究会校正班
公開 / 更新2004-10-04 / 2014-09-18
長さの目安約 44 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

「僕、ここに書類を持ってるんだがね……」
 と、私の友人、シャーロック・ホームズは云った。それは冬のある夜のことで、私たちは火をかこんで腰かけていた。
「ワトソン君、これは君も一読しといていいものだろうと思うんだよ。そら例の『グロリア・スコット』の怪事件なんだが、それからこの手紙は、治安判事のトレヴォが、それを読んで、恐怖のため死んでしまった手紙なんだよ」
 彼は抽斗から少しよごれた円筒形に巻いたものをとり出し、そのテイプをほどいて、灰色の半截の紙の上に、ぞんざいな字で書いてある、短い文句の書いてある紙を、私に手渡した。
――ロンドンにおける、計画は、着々として、なされたり。主任、看視者、ハドソンは、蠅捕紙の命令の、すべてを、受くるべく、既に、予告せり、貴下の、雄鳥雉の、逃亡せる、ことを、信ぜられよ。
 と、それには書いてあった。
 私がこの不可解な手紙を読み終って顔を上げた時、私は、ホームズがニヤニヤ変な笑い方をしながら、私の顔に浮ぶ表情を眺めているのに気がついた。
「少なからずまごつかされたようだね」
 彼は云った。
「私にはこんな手紙が、どうして恐怖を引き起こしたのかどう考えても分からないね。ただ奇怪だと思われるだけだよ」
「まあ、その通りだ。しかも事実は、それを読んだ男は、その通達書が、まるでピストルの台尻ででもあったかのように、そのためにすっかりたたきのめされてしまったのだ。その男は上品な剛直な老人だったが……」
「面白そうだね」
 私は云った。
「けれどなんだって君は、この事件を研究しておく必要があるなんて云うのかね」
「そりア、これが僕の初めてやった事件だったからさ――」
 私はしばしばホームズから、彼が犯罪捜索の方法において、一番初めにどう云う所へ心をむけるであろうかと云うことについて、ききだそうとしてみたことはあった。けれども今までに、気軽に自分のほうから話してくれる彼に出会ったことはなかった。――彼は肱附き椅子に腰かけたからだを前に乗り出して、膝の上に例の記録をひろげた。それからパイプに火をつけて、しばらくの間煙草をくゆらしながらその頁をひっくりかえしていた。
「君は僕がビクター・トレヴォの話をしたのをきいたことがなかったかね?」
 彼はきいた。
「その男は僕が大学にいた二年間に出来た、たった一人の友達だったのだ。僕は決して社交家じゃなかったから、いつもむしろ自分の部屋の中にとじこもって、推理方法の研究を積むことを好んでいた。だから僕は決して自分と同年輩のものとつき合ったことはなかったよ。棒剣術だとかボキシングだとか云うようなものにもほとんど興味がなかったし、従って研究していること柄が、他の連中とは全く違っていて、全然接触する点なんかなかったのだ。しかしそうした中にあって、僕が知り合いになったのはトレヴォだけだったんだ。しかもそれも、ある…

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