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『地球盗難』の作者の言葉
『ちきゅうとうなん』のさくしゃのことば
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」 三一書房
1991(平成3)年10月15日
初出「地球盗難」1937(昭和12)年4月5日
入力者田中哲郎
校正者土屋隆
公開 / 更新2005-07-25 / 2014-09-18
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 本書は、僕がこれまでに作った科学小説らしいものを殆んど全部集めたものだ。科学小説らしい――といって、これを科学小説と云い切らぬわけは二つある。一つは僕が探偵小説として発表したものが一二混っていること、もう一つは僕の本当に企図しているところの科学小説としては、まだまだ物足らぬ感がするから、本当の科学小説はいよいよ今後に書くぞという作者の意気ごみを示したいことと、この二つの事由によっている。
 元来わが国には、科学小説時代というものがまだやって来ていない。しかし強いて過去にこれを求めるなれば、押川春浪氏の『海底軍艦』などが若き読者の血を湧した時代、つまり明治四十年前後がそうであったようにも思われる。春浪氏の著作中には、早くも今日の潜水艦や軍用飛行機などを着想し、これを小説のなかに思う存分使用したのであった。しかし春浪氏の外には、これに匹敵するほどの科学小説家なく、また春浪氏の作品は、冒険小説なる名称をもって呼びならわされたのであって、その頃を科学小説時代と云うにはすこし適当ではないように思う。さりながら、その出所のいずくなるを暫く措くとするも、とにかく『海底軍艦』などの科学小説がその頃現れ、読者の血を湧したことは厳然たる事実であって、押川春浪氏の名をわが科学小説史の上に落とすことは出来ない。
 それからこの方、誰が科学小説を書いたであろうか。僕の識る範囲では、野村胡堂氏、三津木春影氏、松山思水氏などが、少数の科学小説またはそれらしいものを書いた。しかしそれ等は、不幸にして読書界に多くの反響を呼びおこさなかったようである。一方ウェルズやベルヌの翻訳ものが出て、いささか淡い色をつけてくれたに過ぎない。
 その奮わぬ科学小説時代は、遂に今日にまで及んでいるといって差支えない。過去に於て、科学小説の奮わなかったことは、肯けないことではない。一般読者階級には、科学小説に興味をもつ者も少く、科学を理解する者の頭から純然とひねりだされた科学小説もなく、そしてまた科学者たちは本来の科学研究を行うのに寧日なく、自己の科学趣味や科学報恩の意志を延長して科学小説にまで手を伸ばそうという人は皆無だった。
 ところが今や世はあげて、科学隆興時代となり、生活は科学の恩恵によって目まぐるしいまでに便利なものとなり、科学によって生活程度は急激なる進歩をもたらし、科学に従事し、科学に趣味をもつ者はまた非常に多くなってきた。しかも国際関係はいよいよ尖鋭化し、その国の科学発達の程度如何によってその国の安全如何が直接露骨に判断されるという驚くべくまた恐るべき科学力時代を迎えるに至った。科学に縋らなければ、人類は一日たりとも安全を保証し得ない時代となった。従前の世界では、金力が物を云った。今日は、金力よりも科学力である。いくら金があったとしても、科学力に於て優越していないときは勝者たることは難い。世界…

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