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心霊研究会の怪
しんれいけんきゅうかいのかい
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「海野十三メモリアル・ブック」 先鋭疾風社
2000(平成12)年5月17日
初出「宝石」1949(昭和24)年8月号
入力者田中哲郎
校正者土屋隆
公開 / 更新2005-01-26 / 2014-09-18
長さの目安約 16 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

      その頃の研究

 昭和五年から十年頃まで、わが國で、心靈研究がかなり盛んだつたことがある。
 外國では、その當時も心靈研究が盛んであり、有名なシャーロック・ホームズ探偵の物語をたくさん書いたコーナン・ドイル翁も熱心な研究家であり、その著書もその頃わが國へ渡來し、紹介された。
 アメリカでは、もつと早くから、心靈研究が盛んであつた。そしてそれが詐術であるといふ證明をすることが、通俗科學雜誌の紙面を毎月賑はしてゐた。
 わが國では、むしろドイル翁などの研究に加擔してゐた人が多かつたやうである。たとへば、大本教の幹部として知られてゐた淺野和三郎文學士などは、そのひとりであつた。
 淺野氏は、どつちかといふと、研究に獨自の立場を取つてゐたやうで、いはゆる心靈研究會や招靈會などの經營には、あまり興味を持つてゐないやうに見えた。
 とにかくその頃、心靈研究者が急に殖えた。それは當時の絶望的國情を反映し、信者が日増しに殖えて來たものだと思はれる。
 心靈研究會でやることは、第一に、靈媒を使つての招靈問答であり、第二には、やはり靈媒を使つて招靈し、その心靈にいろいろふしぎなる現象を見せてもらふことだつた。第三には、惡い心靈に取憑かれてゐる患者を治療することであつた。これにも靈媒の力を借りなくてはならなかつた。第四には、自分が靈媒となる修行であつた。まづ、當時の心靈研究會のスペクタルは以上の四つであつた。
 これによつて分るとほり、心靈研究には、靈媒の良否が直接に影響するのであつた。だから、いい靈媒を探し出すこと、靈媒の修行を積ませることが、心靈研究會の重大なる投資的仕事であつた。いい靈媒には、常に爭奪戰がついて[#挿絵]つた。いい靈媒はたいへん忙しくなり、席の温まる遑もない位であつた。
 靈媒には婦人が多かつた。そして彼女たちは、地方に於て奇異を演じ、それがだんだん有名になつて來ると、心靈研究會が聞きつけて都會へ引張り出しに來るといふのが普通の順序であつた。
 心靈研究會に興味を持つ人々が、だんだん多く集つて來ると、心靈の科學的考察が盛んとなり、新しい科學の分野にわれこそ先に踏みこむのだといふ篤學の熱心家が現はれ、「心靈電子論」だとか、「心靈四次元論」だとか、「心靈三世説」とかを提唱して體系づけ、心靈の存在に確乎たる裏打ちを施すのであつた。電子論の上つ面だけしか知らない手合は、この論説にころりと參つてしまつて、次には自分がそれを説く立場へ進むのであつた。
 理論の方は、山の芋のやうなもので、いくら捕へようとしても、ぬらぬらして、逃げられてしまふが、心靈實驗の物理化學的説明となると、これはなかなかうまく行かず、實驗の條件がどうのかうのとの爭ひが頻發し、揚句の果は、折角會の方へ半分位引摺りこんだ本格的理學者たちに逃げられてしまつたり、惡い場合は、尻尾をおさへられさう…

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