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国際学術会議への旅
こくさいがくじゅつかいぎへのたび
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「自然 300号記念増刊 総収録 仁科芳雄・湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一」 中央公論社
1971(昭和46)年3月20日
初出「自然」1950(昭和25)年2月
入力者山崎雅人
校正者小林徹
公開 / 更新2005-12-03 / 2014-09-18
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私は昨年9月14日から16日まで,デンマークの首都コペンハーゲンで開かれた國際學術會議に,日本學術會議を代表して出席することになり,9月9日の朝2時すぎにパンアメリカンの飛行機で羽田を發った.そして翌朝未明に沖繩の那霸空港につき,1時間ばかりですぐ飛び立ち,香港に向った.途中は好い天氣であったが,香港に着いて聞くと,同地は昨日時速100マイルの颱風があったということで,まだ荒れ氣味である.
 香港の空港は九龍側にあって,多くの空港と同樣殺風景なところであるが,空路が集中しておって,絶えず飛行機が發着する.例えば“air bus”と稱する廣東行が1日に12回もでるということであった.その後,中共が廣東を占領してからはどうなったであろう.
 香港では4時間ばかり待って,午後4時に,同じ型ではあったが,少し小さい(座席約30)飛行機で出發,パンコックに向う.そして6時間半飛んでバンコックの地方時午後8時半に空港についた.空港は町からだいぶん離れているらしく,地方色もあまり見られない.ここでも1時間待って出發,カルカッタに向った.そして5時間半を費して同地についたのは翌9月10日の地方時午前2時であった.ここでは必ず飛行機を乘り替える.というのは,サンフランシスコ―カルカッタ間を往復しているのが太平洋航路で,ニューヨーク―カルカッタ間を往復しておるのが大西洋航路である.そして同じパンアメリカンではあるが,後者は少し型の大きいコンステレーション機を使っている.
 カルカッタでは19時間も待つので,その日は大學總長の Barnerjie 博士や,商業會議所の事務局長 Tawari 博士に會って,印度の状況を尋ねた.Saha 博士に會いたかったのであるが,Science College が共産主義者の騷ぎで,當日は閉鎖せられていたから,殘念ながら目的を達しなかった.
 ずいぶん濕氣の多い暑さに惱まされたが,その晩9時カルカッタを出發,3時間半を費して9月11日零時半頃デリイについた.ここも空港を見るだけで1時すぎ出發,3時間餘を費して,朝4時半パキスタンのカラチについた.ここでも空港以外には出られないが,どこでも空港に着く度毎に飛行機を追い出されて,旅劵その他の檢査を受け,飛行機は給油,點檢せられる.
 朝5時半カラチ發,海岸を飛んでアラビア灣の西岸を北上して,砂漠の上を過ぎ,8時間を經て地方時間午前10時すぎにシリヤのダマスカスに着いた.空港の邊は滿目土褐色で草木はなく,家屋も同じ一色に塗られている.しかし丘の上には黒い山羊の群がうごめいているのを見ると,やはり草はあるのであろう.この邊は乾期となると,5ヵ月も雨は降らないという.
 朝11時半出發,今までもそうであつたが,高度14,000〜15,000フィート,時速200マイル餘で飛ぶのである.間もなく快晴できれいな…

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