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科学時潮
かがくじちょう
作品ID43718
著者海野 十三 / 佐野 昌一
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 別巻2 日記・書簡・雑纂」 三一書房
1993(平成5)年1月31日
初出「新青年」1928(昭和3)年1月号
入力者田中哲郎
校正者土屋隆
公開 / 更新2005-05-15 / 2014-09-18
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

   地下鉄道の開通

 上野、浅草間の地下鉄道が出来た。入って見ると随分明るくて温い。電車の車体は黄色に塗られ、架空線はないから随ってポールやパンタグラフは無い。皆レールのところから電気を取っている。一時間十五哩の速力であるから上野、浅草間は五分位で連絡が出来る。
 地下鉄道の出来たことは、いろいろな意味に於て愉快である。高速度であるため市民がセーブする時間は大したものであろうし、又東京市が飛行機の襲撃を受けたときは、市民が爆弾を避けるには兎も角も都合のよいところだし、それから又、外国の探偵小説並に、地下鉄を取扱った面白い創作探偵小説が諸作家によって生れて来ることであろうし、結構なことである。

   飯粒と弁当箱

 特許局から出ている審決文中の珍なるものを一つ拾い出して御覧に入れる。
「大正十四年特許願第六五一七号拒絶査定不服抗告審判事件ニ付査定スルコト左ノ如シ。
主文。原査定ヲ破毀ス。
飯粒ノ附着セサル弁当箱ハ特許スヘキモノトス。」
「飯粒の附着せざる弁当箱」という文句を読むと、「飯粒の附着していない弁当箱」という意味にとれる。飯を食った後で洗ってしまえば弁当箱には飯粒は附着していないはずである。これが何うして特許になるのか不思議に思うが、さて其の真意は――。
 飯を弁当箱につめ込んで、然るのちこれを取出しても、あとに飯粒が弁当箱の底や周壁に附着(寧ろ固着)することのない弁当箱。――という意味で、アルミ弁当箱の内側にゼラチンのようなものをひいて置くと、奇妙に飯粒が附着しないことを覘った特許願である。
 種を明かして仕舞えば何でもないが、兎も角も「飯粒ノ附着セサル弁当箱ハ特許スヘキモノトス」は愉快な文句ではないか。

   英米間無線電話

 英国と米国との間に行われている公衆用無線電話の其後の成績を聞くのに、英国から米国へ掛けられるものが毎日三通話、米国から英国へ掛けられるものが毎日四通話で、合計高平均七通話だそうで、この装置の維持費とトントン位の収入になるそうな。
 因にこの無線電話の通話料は、一分間につき大凡五十円である。

   科学小説『緑の汚点』

 近頃読んだ科学小説の中で、一寸面白いなと思ったものの中に、此の『緑の汚点』というのがある。
 時は現代である。アメリカ大陸の山奥に、死の谷と呼ばれるところがあって、其処を訪ねた人間は一人として無事に帰って来たものがない。遠方からそこを望遠鏡で覗いた者の話によると、人間の白骨ばかりでなく、時々紛れ込んで来る熊や鹿や其の他の動物の屍や骨が夥しく死の谷の中に散見するそうである。
 この死の谷の不可思議な謎を解くために学者の一団が探検に赴くことになる。一行は二人の死刑囚を同行した。これは死の谷への先登をやらせるためで、万一危険が生じて来てもこの二人の死刑囚が先ずどうかなる筈で、所謂パイロット・ランプの…

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