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人造物語
じんぞうものがたり
作品ID43719
著者海野 十三
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」 三一書房
1991(平成3)年10月15日
初出「新青年」1931(昭和6)年4月号
入力者田中哲郎
校正者土屋隆
公開 / 更新2005-07-23 / 2014-09-18
長さの目安約 18 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 人造人間――1931年型である。
     *   *
 人造人間とはどんなものか。
 人造人間とは、人間が作った人形で、そいつは、機械仕掛けで、人間の命令どおり、忠実に根気よく働く奴だ。
     *   *
 さて、その人造人間が、ようやく、その存在を認められかけて来たようだ。
 本誌「新青年」の新年号に、「人造人間殺害事件」という探偵小説が出たのも、その一つ。前号には畏敬する直木三十五氏の「ロボツトとベツドの重量」というのが出た。
 すこし前に、東京上野の松坂屋で、1999年の科学時代の展覧会があって、そこに人造人間が舞台に立ち、みなさんと交歓した。
 今年の正月には、朝日新聞の招聘で、人造人間レマルク君が独逸から、はるばるやって来て、みなさんの前に、円満な顔をニコニコさせて御挨拶があった。
     *   *
 二月一日の東京朝日には、宮津電話として次のような記事が載っていた。
「ロボット流行時代であるが、京都府宮津中学校の四年生岡山大助君という少年が今度、人造犬を発明した、これは犬の腹中に電話器、モートル、電磁石、高圧器、真空管、スピーカー等を材料にして、でっちあげた機械がしかけてあるので、大助君の先生も手伝った。この人造犬は、足音をさせたり口笛を吹いたりすると、その音が送話器から電流を通じてモートルに働きかけ、その結果として犬は後退りをしながら「ウーウー」とうなる。うなり声はスピーカーによって大きくもなれば小さくもなる。というから泥棒よけにはあつらえ向きだ」とある。
 いよいよ、油断も、隙もならぬ世の中となってきた。
     *   *
 この種の人造人間は、いつから人間の脳裏に浮びあがったかというと、それは随分と古いものらしい。ギリシャ神話の中にもそれがあったように思う。
 エデンの園で、アダムの肋骨を一本とってそれからイヴという美しい女を作り給うた、というのは、形式的には神様のなせる業ではあるようなものの、その考えは、無論、人間の頭脳から発生したことは言うまでもない。
 古事記によると、我が国の神達は、盛んに国土を産み、いろいろ特殊の専門というか、技術を弁えられたさまざまの神々達を産むことに成功し給うたと書いてある。これも、人造人間の思想と見てさしつかえないであろうと思う。
     *   *
 幼いとき、小学校の「山羊」という綽名のある校長さんから、面白いお伽噺をして貰ったが、その中で、最もよく覚えているのは、こんな噺であった。
 宝を探しに行く兄弟のうち、末の弟は大変情けぶかい子であったが、それがために、秘術を教わった。その秘術というは、なんでも木片をナイフでけずって、小楊子みたいなものを造り、それを叩いて「動け!」というと、その木屑が、起ちあがってヒョックリ、ヒョックリ躍り出す。そのとき、もう一度、それを手で叩いて、「成れ!」と…

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