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成層圏飛行と私のメモ
せいそうけんひこうとわたしのメモ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」 三一書房
1991(平成3)年10月15日
初出「航空朝日」1941(昭和16)年6月号
入力者田中哲郎
校正者土屋隆
公開 / 更新2005-07-25 / 2014-09-18
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 成層圏飛行について、なにか書けという注文である。
 素人の私に、なにが書けるわけのものでない。が、素人をむき出しにして、専門家のいわないことをのべてみるのも、一興であろうと思い、ペンをとりあげた。
 一体、成層圏とは、どんな高さの空で、そこではどんなことが特徴になっているのか、これは素人のわれわれが一番初めに知りたいところである。これについては、何べんか調べて、そのときは憶えているくせに、間もなく忘れてしまう。身につかないことは、仕方のないものである。
 私の調べによって、素人の一等知りたいところを述べると、成層圏の高さは、まず海面から測って、十キロメートル以上五十五キロ以下の空中をいうのである。この成層圏の性質は、もちろん、空気は稀薄であり、水蒸気は殆どなく、温度も摂氏の氷点下五十何度という寒冷さにおかれ高層にのぼるほど多少温度が上昇する傾向がある。それから高気圧も低気圧もあらわれず、風はいつもしずかに一定方向に吹いていると云う。
 下から成層圏へのぼっていくと、白昼でもまず十キロのあたりでは、空が暗青色となり、それからだんだん暗さを増して、暗紫色となり、二十キロを超えるころには黒紫色となり、それ以上は黒灰色になって、われわれが普段見ている晴れた夜空と同じようになる。
 以上が、成層圏についての私の常識である。
 さてこの成層圏を飛行することであるが、なぜこんな高いところをとぶかというと、それは空気の抵抗がすくないため、相当のスピードが経済的に出せるところを狙ったものである。また、低空では、とても出せないようなスピードも、成層圏では比較的楽に出せる。
 そういうわけで、遠距離へとぶときには、一旦成層圏へとびあがって、そこを飛行するのが時間的にも燃料消費の上にも経済である。
 そういうわけなら、大いに成層圏飛行が行われてもいい筈であるが、これがまだあまり行われていないのは、どういうわけであるか。その答は、極めて簡単である。成層圏飛行は目下研究中に属していて、われわれの目にふれるところまでに発達していない。
 今日各国は、それぞれ秘密裡に、この成層圏飛行の研究をすすめているが、ドイツとアメリカが最もさかんのようであり、ソ連でも中々やっているようである。が、われわれの目にふれるものは、成層圏よりも幾分低いところを飛ぶ亜成層圏飛行であるらしい。その高度は六千メートル附近であるらしいから、もう四千メートルぐらい上に、成層圏があるわけである。
 このような亜成層圏飛行でも、やはり右にのべた恩沢はある程度あるらしい。そこでは、いつも西風が吹いているという。そして、この亜成層圏でも、空中に酸素が少いから、呼吸がかなり困難であり、また前にのべたように、摂氏の氷点下五十何度とか、ところによると八十何度のところもあるので、この寒さにも打ち克たねばならず、それぞれ特別の用意が必…

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