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さをのしづく
さおのしずく
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「樋口一葉全集 第三卷(下)」 筑摩書房
1978(昭和53)年11月10日
入力者三州生桑
校正者今井忠夫
公開 / 更新2004-02-11 / 2014-09-18
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

ある人のもとにて紫式部と清少納言のよしあしいかになどいふ事の侍りし 人は式部/\とたゞほめにほめぬ しかあらんそれさる事ながら清はらのおもとは世にあはれの人也 名家の末なれば世のおぼえもかろからざりしやしらず 万に女ははかなき物なればはか/″\しき後見などもなくてはふれけむほどうしつらしなどみにしみぬべき事ぞ多かりけらし やう/\宮づかへに出初ぬる後宮の御いつくしみにさる人ありとしられ初て香爐峯の雪に簾をまくなど才たけたりとはかくしてぞあらはれぬ 少納言は心づからと身をもてなすよりはかくあるべき物ぞかくあれとも教ゆる人はあらざりき 式部はをさなきより父爲時がをしへ兄もありしかば人のいもうとゝしてかず/\におさゆる所も有たりけん いはゞ富家に生れたる娘のすなほにそだちてそのほど/\の人妻に成たるものとやいはまし 少納言は心たかく身のはか/″\しからざりしかばことに出で行ひにあらはさではいづらいかにと見る人もあらざりけんを式部は天台の一心三觀とやらんおさむる所ふかく侍りし 少納言も佛人にてはありけれどこゝろに浪のさわぎはげしければくまなき月は照らさずや侍りけん あはれなるはかくありける身ぞかし 才はおのづからにして徳はやしなふて後の物にこそ 風しづかにしては沖につり舟のかずも見るべく雲さわぎては外山のかげもおぼろげに成ぬべし 式部が日記に少納言をそしりしはさる事ながら此人はうきよのほか物なりける也 わが日の本に三筆のひとつといひし世尊寺の卿をはじめ袖のうつり香ゆかしとしたひし君たちのうちたれかはまが/\敷しれものあらんや さる人々の此君に別れぬる後いかならんつまを得たりともあはれたちまさりてなどおもへるはあらじ 一時の情に一とおもはれぬるは此人のゝぞみたりぬる成かし 駿馬の骨といひける終りのさまを淺ましとつまはじきするは其人をしらねばぞかし 宮の御前すら撫子に涙をそゝぎ給ひけるほど少納言のかくありけるは道理也 おなじうは御堂どのが前にて猶今少しいはせまほしき事侍り 此君を女としてあげつらふ人あやまれり はやう女のさかいをはなれぬる人なればつひの世につまも侍らざりき子も侍らざりき 假初の筆すさび成ける枕の草子をひもとき侍るにうはべは花紅葉のうるはしげなることもふたゝび三度見もてゆくに哀れに淋しき氣ぞ此中にもこもり侍る 源氏物がたりを千古の名物とたゝゆるはその時その人のうちあひてつひにさるものゝ出來にけん 少納言に式部の才なしといふべからず 式部が徳は少納言にまさりたる事もとよりなれどさりとて少納言ををとしめるはあやまれり 式部は天つちのいとしごにて少納言は霜ふる野邊にすて子の身の上成るべし あはれなるは此君の上やといひしに人々あざみ笑ひぬ

物かく筆はやはらかに持てゆび先に力のいらざるぞよきとさる人仰せられしはげにさる事なるべし うでにて書くと又人のいひしいかゞな…

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