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アカデミイの書取
アカデミイのかきとり
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集21」 岩波書店
1990(平成2)年7月9日
初出「ふらんす 第五巻第一号」1929(昭和4)年1月1日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2007-06-22 / 2016-05-12
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ナポレオン三世の宮中では、皇后ウージェニイを中心に、当時の錚々たる文学者を交へた特色のある集会が行はれたが、その席で、何時からともなく、「秘書役ごつこ」といふ遊戯がはじまつた。
 ある日のこと、プロスペエル・メリメが出題者になつて、有名な「アカデミイの書取」をやることになり、競技者を募つたところ、出題者が出題者だけに、多くの廷臣たちは、いろいろ口実を設けて、尻ごみをするばかりだつた。
 兎も角、勇敢な連中だけが、鉛筆を取り上げた。勇敢な連中とは、皇帝ナポレオン三世、皇后ウージェニイ、学問自慢の貴族と少数の大官連、それに、文学者側から、アレクサンドル・ヂュマ・フィス、オクタアヴ・フウイエ、その外、メッテルニッヒ公爵とその夫人ポオリイヌ、などであつた。
 メリメは、やがて、問題の文章を読み上げた。
 いよいよ答案を集める段になると、みんな不安げに顔を見合せた。
 集めた答案に誤りの個所をしるすメリメの口辺には、愉快げな微笑が浮んでゐる。
 結果が報告された。
 皇帝陛下、お間違ひ、四十五……。
 皇后陛下、お間違ひ、六十二……。
 メッテルニッヒ公爵夫人、四十二……。
 アレクサンドル・ヂュマ氏、二十四……。
 オクタアヴ・フウイエ氏、十九……。
 メッテルニッヒ公爵閣下、三……。

 二人のアカデミイ会員は、大に面目を潰して、小鼻を撫でまわしてゐる。それを見て、一同は、ドッと笑つた。
 すると、アレクサンドル・ヂュマは、つと起ち上つて、最も年少の外国貴賓メッテルニッヒ公爵の前に進み出で、恭しく、
「公爵、アカデミイで、綴字法の御講義を何時お願ひできませうか」
 と云つた。

 読者諸君、私は偶然、メリメの提出した此の書取の問題を手に入れました。左にそれを掲げます。諸君が仏蘭西語を習はれた先生に、試みに此の問題を出して御覧になつては如何です。

Pour parler sans ambigu[#挿絵]t[#挿絵], ce d[#挿絵]ner[#挿絵]Sainte-Adresse, pr[#挿絵]s du Havre, malgr[#挿絵]les effluves, embaum[#挿絵]s de la mer, malgr[#挿絵]les vins, de tr[#挿絵]s bons crus, les cuisseaux de veau et les cuissots de chevreuil prodigu[#挿絵]s par l'amphitryon, fut un vrai gu[#挿絵]pier.
Quelles que soient, quelq[#挿絵]exigu[#挿絵]s q[#挿絵]aient pu para[#挿絵]tre,[#挿絵]c[#挿絵]t[#挿絵]de la somme due, les arrhes q[#挿絵][#挿絵]ta…

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