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日本演劇の特質
にほんえんげきのとくしつ
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集24」 岩波書店
1991(平成3)年3月8日
初出「昭和十三年・夏期日本文化講座講演集」国際学友会、1939(昭和14)年6月30日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2009-12-18 / 2014-09-21
長さの目安約 36 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

九月三日(土曜日)午前九時三十分開講

 今から「日本演劇の特質」といふ題でお話をしようと思ひます。皆さんは特別に日本の演劇を研究しようといふ目的を持つておいでになるお方ではないと思ひます。ですから余り専門的なお話をしても面白くないので、成るべく皆さんが日本に滞在しておいでになる間、日本の芝居に接触なさる上で御便宜になる様なお話をしたいと思ひます。日本の演劇はどういふ点に特色があるかといふことを知る為には、どうしても之は日本と云ふものを先づ知つて戴かなければならない。それからもう一つは演劇と云ふものはどういふものかといふ根本の知識を持つて戴かなければなりませぬ。併し日本といふものは御覧の通り非常に複雑な面貌をもつてゐます。斯う云ふ所も日本かと想ふと又全くそれと一見反対の様な或は矛盾した様な部分が日本にあるのであります。さういふ様な意味で日本の全貌を捉へるといふことは、皆さんにとつてなか/\やさしい事でないと思ひますが、殊に劇とはどういふものかといふことは、之は普通常識で芝居を観て、芝居とはこんなものかといふ事が解つてゐるといふのでは不充分なので、芝居と云ふものはどういふ様な要素で出来てゐるか、或は又芝居の歴史はどうであるかといふ、さういふ色々な方面から芝居を研究した上でなければ芝居とは何か、演劇とは何かと云ふ事が先づはつきり掴めないと思ふのであります。しかし、さういふ基本的なことを私は此処で申上げて居る暇はありませんから、先づ皆さんが今日迄、もう日本でなり或は皆さんのお国でなり御覧になつた芝居と云ふものゝ知識を信用してお話を進めて行きたいと思ひます。
 で、是から東京でどういふ機会かに劇場に足をお向けになることがあると思ふのでありますが、其時にこの芝居は現在日本でどういふ地位を占めてゐるか、ほかの芝居とどういふ所が違ふかといふ極く一通りの概念を持つてお出でになると、幾らか便宜でもあり、又吾々としましては、日本の芝居と云ふものを皆さんの頭に誤つた印象として残さないために、特にさういふ点をこの機会に出来るだけ細かくお話したいといふことは、詰り今日吾々日本人が芝居と云ふものを通じてどういふものを作り出し、どう云ふものを育てゝ行かうとしてゐるかといふ精神を酌取つて戴きたいからであります。現在日本の演劇と云へば其の種類は非常に豊富であり雑多である、其の種類が非常に多いといふことは、恐らく世界のどの国に較べても敗けない位だと思ひます。種類が多いといふ事許りが決して自慢にはならないのでありますけれども、其の種類の多いと云ふことが日本の現在の芝居の特質と数へても宜いと思ひます。どういふ訳でそんなに日本の芝居の種類が現在多くあつて、さうしてそれらの種類の芝居が昔から大体に於て今日迄続いて来て居るかと云ふことには理由がある、其の理由を説明致しますが、その前にそれなら一体どんな種…

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