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母親の心理学
ははおやのしんりがく
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集24」 岩波書店
1991(平成3)年3月8日
初出「北海タイムス」1939(昭和14)年5月12日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2009-12-28 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 ある知人の小児科医がかつて私に云つた。「近頃は生意気なお母さんがふえて、診てもらふ子供の病名を先に云ふのがゐる。今これ/\の手当をしてゐるなどゝ得意になつてまくしたてるのがゐるよ。困つたもんだね。まるでお母さんが自分の医学知識に折紙をつけさせようと思つてわれわれの処へやつて来るみたいだよ。さういふのは、得て誤診と相場がきまつてゐる。生兵法大怪我のもとつていふのは医術の場合にもあてはまるんだ」
 この話を聞いて、私は、暗然とした。どうしてかう世の中のことはうまくいかないんだらうと思つた。
 学校と家庭との協力、或は連絡といふことが屡々教育者の口から叫ばれてゐる。
 子供の成績が悪くなり、或は、学校に行くことをいやがる原因について、率直に、母親と学校教師とが研究し合ふ道がどこに作られてゐるか?
 自分の子供の義務教育を委せるべき学校の諸方針について子供の将来に全責を持つべき世の親たちは、どれだけの意見や希望をどういふ方法で十分円滑に学校当局に伝へ得るか?
 今の学校教育に必ずしも大きな不満があるといふわけではないが、学校と家庭との協力や連絡が、事実空文の上で尊重されてゐる結果について、これは、子供を持つ母親の全部がとくと考へて見なければならぬ時機だと思ふ。
 皆さんは、家庭以外に於ける自分の子供のことを知らなさすぎ、学校に於けるよその子供のことに全く無関心だといふ怖るべき怠慢さについて反省なさつたことはありますか?
 医者も、教師も、それぞれ、専門家としてのプライドを傷けられたくないのである。



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