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文化政策展開の方向
ぶんかせいさくてんかいのほうこう
作品ID44661
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集25」 岩波書店
1991(平成3)年8月8日
初出「大陸新聞」1941(昭和16)年1月1日、「神戸新聞」1941(昭和16)年1月2日、「信濃毎日新聞」1941(昭和16)年1月11日、12日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-03-15 / 2014-09-21
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 文化政策といふ言葉は範囲のたいへん広い言葉である。あらゆる政策は殖民政策でも宗教政策でも、教育政策、科学政策、乃至は経済政策、生産力拡充政策でもそれが国民生活を向上せしめ、民族意慾を暢達せしめる文化的使命をもち、その目標に向つてゐるかぎりそれは文化政策であるといへるのである。
 しかし、こゝで文化政策の展開とその方向として要求されてゐるのは、専ら一般に文化といふ言葉で指示されてゐる教育とか、宗教とか、科学とか、技術とか、医療設備とか、あるひは民衆娯楽だとかを意味し、それについて翼賛会の文化部がこれからどんな政策を樹てゝ、どんな活動をするかといふことを指してゐるのである。
 この場合文化部のとるべき文化政策の内容がどんなものであり、どんな方向に向つて展開されなければならないかといふことを考へると、私は広狭二つの意味を区別して置くことが必要だと思ふ。広い意味のものは簡単にいへば国家百年の文化政策を樹立することである。
 すなはち、我々の子孫の時代迄も考慮に入れて、日本民族が新東亜の指導民族であるといふ立場を深く自覚し、われわれの輝しい伝統を基底として高雅にして雄渾なる新広域文化を創造建設し、これを育成すべき政策を確立することである。このためには、先づいかなる他民族に対しても譲らざる矜持と襟度と、そして教養とをもつ大国民を育成することが第一の眼目でなければならぬ。
 しかし、この国家百年の計を樹てることもとより重要な事業であるが、当面わが日本国家が直面してゐるこの非常時局を一億の国民が乗り切り、この難局をわが民族的飛躍の輝かしい契機とするためには、何を措いても先づ現行政治機構を速かに高度国防国家体制に推移せしめねばならぬ。それとともに、国民生活の文化的側面をもこの高度国防国家体制に即応させることが必要である。かくして文化政策当面の課題は次の三つの点に帰着する。
 第一は、文化機構の再編成とその指導といふことである。これは民間のいろ/\な文化団体の実質的な仕事を、積極的に国家目的に統合するとともに、このために必要ならば諸団体の改組調整を行はせることである。この改組整理に当つては、それぞれの文化団体の自主的精神を十分に尊重することはいふまでもない。
 更に、これをどう指導するかは、いままで色々な文化団体がそれぞれ自分の専門領域にばかり閉ぢ籠つてゐて、他の領域のことはさつぱり知らない、もつとひどいのは他を排斥するといふ一種の割拠主義に陥つてゐた。そのために文化の各領域、相互の間に有機的な連絡がないために文化が跛行的にしか発展しなかつたと思ふ。
 この弊害を除くために、またこれ等の文化団体を有機的に結合させて、新しい国民文化を形成するための推進的役割を受け持つやうに導かねばならぬ。この割拠主義の一例としては、いはゆる「学閥争ひ」がどんなに日本の学問の進歩を阻害し且つ詰ら…

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