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観光事業と文化問題
かんこうじぎょうとぶんかもんだい
副題――日本観光連盟第六回総会に於ける講演――
――にほんかんこうれんめいだいろっかいそうかいにおけるこうえん――
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集25」 岩波書店
1991(平成3)年8月8日
初出「観光 第一巻第三号」1941(昭和16)年6月20日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-03-29 / 2014-09-21
長さの目安約 20 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私は観光事業に関しては全くの素人で、殊にこの問題は非常に広汎な領域を含んで居りますので、私の申上げることが或は肯綮に当らないかも知れませんが、併し只今この時局下において日本全文化領域のことが考へられて居る際でありますから、観光事業も文化問題として取上げて我々の仕事の一部としたいと思つて居るのであります。これから又此の事業に直接お携はりになつておいでになる専門の方々から教を受けなければなりませんが、只今は不用意でありますが、些か気の付いた点を申上げて見たいと思ふのであります。
 私も平生旅行は割合にする方で、内地のみならず、古いことでありますがヨーロツパにも出掛けたし、ヨーロツパへの行き方も少し変つた行き方をしまして、普通ならば横浜乃至神戸から乗船して直接ヨーロツパ大陸へ行く、或はアメリカを通り、ロシヤを通るといつたやうなコースが色々あります。私はフランスのパリーを目指して参る積りでありましたが、先づ台湾へ行き、台湾から香港に渡り、香港から印度支那、それから馬来、馬来からマルセーユといふ風に、其の間約半年かゝつて行つて居ります。これは別に道楽でさういふコースを選んだ訳ではありませんが、さういふ旅行の仕方を致しました経験から旅行といふものに就て、殊に外国人である私の目に映るそれ/″\の土地の風物或は生活といふものは今日まだ鮮かに残つて居りまして、さういふ風物なり生活なりを通じて今日日本の文化といふものを考へる上に多少役に立つて居る点があるかと思ふのであります。
 元来国内に居て国内の文化といふ問題を考へる場合、勿論これは研究の浅さ深さにも依りますが、文化といふ問題を取上げる場合にはどうしても外国との比較が重要だと思ふのであります。今日に限りませんが、欧米から日本に来て居る人達で日本の文化を研究して居る連中の話を折に触れて聞きますと、日本の文化について話をする場合必ず其の引合に色々の国の文化を出す。さうしてそれ等の問題が常に其の人の観察力といふものに依つて支配されて居る。非常に観察の鋭い人、或は観察の浅い平凡な人に依つて日本といふ国が如何に映つて居るかといふことを私は絶えず教へられて居ります。最近にも或ドイツ人と話をして、日本の現代文化、特に日本人の現代生活といふ問題に触れたのでありますが、そのドイツ人は有名な教育学者であつて相当教養のある人ですが、日本の現代生活に対して非常に辛辣な観察を下して居ります。さうしてこの辛辣な観察の中に我々は矢張り多くの反省しなければならぬ点を発見すると同時に、又さういふ辛辣な観察に対して十分私共日本人としてこれに一つの別な方向を与へるだけの自信と用意がなければならないと思ふのであります。
 必ずしも日本人であるから日本人の弁護をしてそれで義務を果すといふだけのことではないのでありまして、辛辣な観察が動もすると矢張り一方的になつて、…

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