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優にやさしき心
ゆうにやさしきこころ
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集25」 岩波書店
1991(平成3)年8月8日
初出「放送 第二巻第二号」1942(昭和17)年2月1日
入力者tatsuki
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-04-15 / 2014-09-21
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 今こそ日本人といふ日本人は一人残らず、共通の感激、共通の幸福感、そして、共通の矜りをもつてゐるといふことがはつきり云へます。われわれは、われわれの手によつて一日一日新しく、しかも偉大な歴史を書き綴つてゐるのであります。
 世界の眼は、悉く、われわれの上に注がれてゐます。日本は何をしでかすか? この興味は、敵と味方とで全くその性質は違ひますけれども、半ば驚嘆を交へた心理的波紋の大きさから云へば、ひとしく、類例のないものでありませう。
 ところで、かういふ衝撃を地球の全面に与へた日本の力なるものは、そもそもどこにあるか? それを考へてみなければなりません。
 もちろん、国体の尊厳なるところ、民族の優秀なるところにありますが、われわれ国民のすべては、あらゆる立場に於て、この力を自ら信じてゐたかといふと、必ずしもさうは云へません。なぜなら、この力は、時あつて忽然と現はれる力のやうに見え、また、平生、ある点にかけては、かういふ力をもつてなどゐさうにないといふ例が間々あるのであります。
 私ははつきり申しますが、現代日本のすべての社会を通じて、この「日本的な力」を完全に備へ、これを有効に発揮し得るのは、ひとり軍隊のみだと信じます。なぜなら、そこには、職責遂行のために必要な精神と技術とを絶えず鍛へあげる純粋にしてかつ厳密な掟があるからであります。
 玉磨かざれば光なしであります。
 如何に立派な歴史を背負ひ、如何にすぐれた素質をもつた民族でも平和に慣れ、安逸をむさぼり、身心の鍛錬を怠つたならば、一朝事ある場合は勿論、長い間には、次第に、自立自衛の力を失ひ、その文化は頽廃し、いはゆる老朽国民に成り果てるのであります。日本民族は、いくたびかの試煉によつて、国家の基礎を益々固めては来ましたが、かの明治の建設期を経て大正に入る頃から、一種小成に安んずるといふやうな風潮が社会の一隅に頭をもたげて来ました。
 西洋文明の軽薄な模倣が際限なく行はれました。
 日本人の真の姿が少くとも表面的には、生活の近代化と共に消え失せようとしつゝあつたのであります。この間、黙々として、国防の重責に任じ、兵を練り、武器を整へ、近代戦への必勝態勢を備へてゐたわが陸海軍のみは、誠に陛下の股肱たるに応はしい国民中の国民であつたと申さなければなりません。しかしながら、われわれも亦、日本人なることに変りはないのであります。
「大君のしこのみ楯」と勇んで出で立つたわれわれの兄弟、夫、父、親、息子たちは、いづれも、昨日までは、われわれと共にあつて、野良に出で、算盤をはじき、事務所に通つてゐたのであります。
 戦場に於ける彼等の心構へをわれわれが日常の心構へとすることはできないでありませうか? 私は、必ずしもこゝで、生と死との問題を論ずるつもりはありません。
 われわれの日常の御奉公は、立派に生きることであります。…

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