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あるニュウ・フェイスへの手紙
あるニュー・フェイスへのてがみ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「岸田國士全集28」 岩波書店
1992(平成4)年6月17日
初出「演劇 第一巻第一号~第七号」1951(昭和26)年6月1日~12月1日、「演劇 第二巻第一号~第二号」1952(昭和27)年1月1日~2月1日
入力者門田裕志
校正者Juki
公開 / 更新2012-05-08 / 2014-09-16
長さの目安約 100 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 昭和二十五年秋、いわゆる「演劇の立体化運動」のために文壇、劇壇の有志数十名により「雲の会」が作られ、その活動の一つとして翌年五月、月刊雑誌「演劇」が創刊された。本稿は、その創刊号から九カ月に亘って連載され、俳優ならびにそれを志す人々のために、個々の具体的な問題について、著者の思いつくままに筆を進めたもので、問題はこれで尽きたわけではないが、二十七年一月同誌の廃刊により、ひとまずこれだけにとどめて発表することとした。

1 舞台俳優と映画俳優


  F・T嬢へ
 今度M撮影所へおはいりになったそうで、まずまずおめでとう。千人からの受験者のうち、五人だけ採用されたというのだから、まことに幸運と申さなければなりますまい。それにしても、あなたが審査員たちの眼にそんなに光った存在として映ったということは、たぶんあなたが俳優として恵まれた素質をもっていられるためと思いますが、しかし、それだけではまだ将来が決定されたとは言えない。これからがたいへんです。そして、そのことを誰よりも強く感じておられればこそ、あなたは、この僕に、さしあたって助言を求められたのだと思います。
 予めお断りしておきますが、僕は、演劇についてはまあ専門家と自称してもいいでしょうが、映画のことに関しては、ことに映画プロパァの問題に関してはまったく素人です。僕の小説がこれまで一、二度映画化されたということは、決して映画にタッチしたことにはなりませんし、多少映画を研究的に観ているという程度では、その領域についていっぱし発言の資格があるかどうかもわからないのです。ただ、あなたも多分、それをご承知のうえであろうと思うが、僕は演劇について言えることが、屡々、それも現代の日本では特に屡々、映画についても言えるという信念をもっています。二、三の優秀な映画人についてそのことを確かめ得る機会もありました。
 幸いにして、あなたのご質問が、映画俳優として立つ上に、舞台の修練と経験とが必要ではなかろうかという点から始まっている。
 そのことにはいずれ後でふれますが、その前に、スクリーンであれ、舞台であれ、苟くも俳優たる以上、俳優とは何者であるか、ということをまずはっきり自覚していなければなんにもならないと思う。あなたにはそれがまだわかっていない、と言っては失礼かも知れないが、どうもそんな気がするのです。
 何事によらず、当節は、偽物と代用品が多い。ところが、それはそれなりに職業として成立っているところに、誘惑もあり危険もあるのですが、あなたの場合は、まさか、そんなことで甘んじるつもりはないでしょう。それでもいいなら、僕はなにも言う必要はありません。一旦易きにつくことを覚えたものは、決して、困難な道を歩もうとはしないからです。

 さて、そもそも俳優とは何者でしょうか?
 この答えは、実はまだ決っていないのです。俳優とい…

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