えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

純粋戯曲への道
じゅんすいぎきょくへのみち
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「岸田國士全集28」 岩波書店
1992(平成4)年6月17日
初出「文学座あとりえ 第十四号」1954(昭和29)年2月8日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-04-10 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より


 矢代静一君の城館をみて、私は非常に新鮮なものと、極めてゆたかな才能の開花のようなものを認めた。
 その新鮮さには戯曲形式への不敵な挑戦が感じられ、テーマの上でも、構成の上でも、また、特に文体の上で、私は最近の日本の戯曲を通じて、これほど、既成のものから完全に離脱を企てた作品にぶつかったことはない。それはたしかに、一つのものの探究にかけられた作者の情熱だと思う。
 作者が、「文学的に」何を追い求めているかを、私は、いま、はっきりいい当てることはできないが、たしかに、それは、新しい戯曲の「生命のエッセンス」ではないかと思う。
 この作品は、ただ、そういう野心だけで、でっちあげたものではなく、寧ろ、野心のかげで、沈着にほほえんでいる作者の柔軟で鋭い感受性を誰も見落さないであろう。
 少し大げさにいえば、かの、ヴァレリイが純粋詩と呼ぶ、言葉の韻律の知的でかつ感覚的な操作において試みた、それと同じ試みを、戯曲の上に試みることをこの作者のよくバランスのとれた才能に私は期待する。
 城館のなかには、まだ不安な手さぐりもあるし、効果の誤算もあるらしい。しかし、一番大事な「劇的な時間」の流れを、瞬間々々のイメージが背負っている。文学座の若い俳優諸君は、この唐突な劇詩にまだなじまぬところもあって、すこし力のいれどころに迷っているのていであるが、やがて軌道に乗るであろう。登場人物の一人一人が、このドラマの作者になったとき、舞台はみごとな近代の色に彩られたタブローとなるであろう。



えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko