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「演劇美の本質」はしがき
「えんげきびのほんしつ」はしがき
作品ID44883
著者岸田 国士
文字遣い新字旧仮名
底本 「岸田國士全集28」 岩波書店
1992(平成4)年6月17日
初出「演劇美の本質」早川書房、1948(昭和23)年4月5日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-04-06 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 演劇に関する評論、感想の類をあつめて書物にするのはこれで三度目である。最初は、「我等の劇場」といふ題で、次ぎは、「現代演劇論」といふ題で出した。今度は、「演劇美の本質」とすることにした。
「我等の劇場」に含まれる文章は大部分「現代演劇論」の中へも入れたが、そのなかから、さらに今日でもなほ、若い演劇研究者、演劇愛好者に是非読んでもらいたいと思ふ文章をあらかた撰び、そのほか、直接演劇を論じたものではないが、私の演劇論の支えとなる一、二の「言葉」に関するノートを加へて、この一巻を編んでみた。
「私の演劇論」などといふとなにか系統だつた、特色のある理論のやうに聞えるけれども、私自身のつもりでは、日本の新しい演劇の樹立の為に当時もつとも必要と感じられた提言が、そこには力を籠めて述べられてあるといふだけで、みづから、ひとかどの演劇学者をもつて任ずるつもりはさらさらないのである。
 演劇革新の目標と手段とは、決して一様ではない筈である。しかし、いかなる演劇の新しい精神と形式とが創り出されるとしても、演劇が演劇でなくなることほど演劇にとつて危いことはない。
 とは云ふものゝ、演劇は演劇にちがひないが、演劇としては魅力がないといふ代物にも警戒を要する。
 一つは観念の過剰によつて、他は、才能の貧困によつて、いづれも、演劇の本質が見失はれる結果である。
 われわれの前には、いまや、口先だけではすまされぬ「演劇の近代化」といふ問題が、真の意味をひつさげて登場して来た観がある。
 私は、相変らず繰り返す――「演劇美の本質を探り、これを捉へることによつてのみ、日本の演劇は急速に近代化されるであらう」と。
  昭和二十二年十一月
浅間山麓にて
著者



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