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川へおちた玉ねぎさん
かわへおちたたまねぎさん
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「子供之友」婦人之友社、1927(昭和2)年9月
入力者菅野朋子
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-09-12 / 2014-09-16
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある町にジヤガイモ・ホテルといふ宿屋がありました。主人といふのが、ジヤガイモだつたからです。
 主人のジヤガイモさんは大変親切な人だつたので、このホテルにはお客様がいつも多すぎて、どうかすると、一晩に、二人や三人のお客様をことわらなければならぬこともありました。
 ある夕方、もう、この上一人のお客様も泊めることが出来ない程、満員になりましたので、「満員になりましたから、お気の毒でも、今晩は、どなたもお泊め出来ません。」といふ大きな満員札をジヤガイモさんは、ホテルの入口にかけようとしました。すると、そこへ、立派な玉ねぎの紳士がやつて来て、ジヤガイモさんに言ひました。
「どうか、ジヤガイモさん、私を泊めて下さい。大変つかれてゐますから。」
 ジヤガイモさんは、気の毒に思ひましたけれども、空いてゐる部屋がないので、
「お気の毒ですけれども、何分、もう満員になつてしまひましたから。」とことわりました。
 けれども、玉ねぎさんは、朝から遠い道を歩きつゞけて、くたくたにつかれてゐるので、この上歩くことが出来ません。
「馬小屋でも、屋根裏でも、どこでもいゝから、どうぞ泊めて下さい。」とたのみました。
 そこで、ジヤガイモさんは考へました。犬さんや、お猫さんならいざ知らず、玉ねぎさんを馬小屋になんぞ泊めたら、いやしんぼの馬が、玉ねぎさんを食べてしまふだらう。屋根裏に泊めたら、遠慮なしのくもが巣をかけるだらう。ジヤガイモさんは大変困りましたが、地下室のことを思ひ出して、
「では、地下室でも、よろしければお泊めします。」と申しました。
 玉ねぎさんは大変よろこんで、泊めてもらふことにしました。そして、ジヤガイモさんに案内してもらつて、地下室に行きました。
 そこは、真くらで、何にも見ることが出来ませんでしたので、玉ねぎさんは手さぐりで、小さいベツドを見付けて、そこへ横になるなり、ぐつすり寝込んでしまひました。
 すると、不思議なことに、そのベツドが少しづゝ、コツトン、コツトンと窓の方へ動き初めました。そして、窓ぎはの所まで来ると一緒に、ベツドは、急に、パンとひつくりかへつて、そのはずみに、玉ねぎさんは、窓の外へ投げ出されてしまひました。
 あ、あ、皆さん、窓の外には、何があつたかごぞんじですか。窓の外には、大きな川が流れてゐたのです。玉ねぎさんは、あつ、と言ふ間もなく、川のなかへ、ざぶんとおつこちて、見てゐるうちに、水のなかへ沈んで見えなくなつてしまひました。
 かはいさうに、玉ねぎさんは、野菜の皮を外にすてるために、こしらへてあつた、電気仕かけの箱をベツドとまちがへて、そのなかにはいつて寝てゐたのです。
 しかし――そのうちに、夜が明けました。
    ×             ×
 朝になつたので、ジヤガイモ・ホテルの主人のジヤガイモさんは、地下室へ、パンと紅茶を銀のお…

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