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歯と眼の悪いおぢいさん
はとめのわるいおじいさん
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「子供之友」婦人之友社、1928(昭和3)年8月
入力者菅野朋子
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-06-02 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 あるところに一人のおぢいさんがありました。おぢいさんはきのふの晩から歯が痛くて仕方がないので、ほつぺたを繃帯してお医者に行かうとしましたが、おぢいさんは貧乏なものですから、一銭もお金がないのでした。しかしどつかに、一銭位おちてゐるかも知れないと思つて、家中の敷物をめくつて、板のすきまをほじくつて見ましたが、一銭もみつかりません。こんどは、家のまわりに積んであるわら束をひつくり返して見ました。すると、にはとりの卵が二つみつかりました。おぢいさんは、近眼の上に、あまりお金がほしかつたものですからその卵が十銭銀貨二枚に見えました。おぢいさんは大喜びで、それをポケツトに入れて出掛けました。
 途中で、おぢいさんは、ピイ/\鳴くひよつ子の声を聞きました。びつくりして見ると、ポケツトの中から黄色い小さいひよつ子が首を出してゐました。おぢいさんは、いつの間に、ひよつ子がポケツトの中へはいつたのだらう、もしや、食ひしんぼのひよつ子に、十銭銀貨をたべられると大変だと思つて、ポケツトをはたいて見ましたら、案の定、十銭銀貨の影も形もありません。
「ひよつ子や、お前たち、十銭銀貨を一つづゝ食べたらう?」とおぢいさんは聞きました。
「いゝえ、おぢいさん、私たちは生れたばかりですから、そんなかたいものはたべられやしません。」とひよつ子は答へました。
「食べないと言つたつて、入れたものがない以上食べない筈はない。」とおぢいさんが言ひましたので、ひよつ子たちは悲しくなつて、ピイ/\やかましく泣きました。
 その声を聞いて、一人のおぢようさんがやつて来て言ひました。
「おぢいさん、どうかそのひよつ子を二十銭で売つて下さい、丁度こゝに十銭銀貨が二枚ありますから。」そして、おぢやうさんはおぢいさんにお金をわたして、ひよつ子を持つて行つてしまひました。
 おぢいさんはおぢやうさんにもらつたお金を持つてお医者様に行きました。そして、さつきの事を話して、「なぜ、ひよつ子のたべた二枚の十銭銀貨が、いつの間にかあのおぢやうさんのお財布のなかにはいつてゐたのでせう。」と申しました。歯のお医者様は笑つて言ひました。「おぢいさん、あなたは眼のお医者へも行かねばなりませんね。」と。



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