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けが を した おほかぜくん
けが を した おおかぜくん
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第二六巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「コドモノクニ」婦人之友社、1939(昭和14)年4月
入力者菅野朋子
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-08-29 / 2014-09-16
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 けふは おほかぜくんは たいへん いいごきげんでした。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ」
 これが おほかぜくんの うたです。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ。なにかいたづらを してやらう。」
 おほかぜくんは とんでいつて、こどもの ぼうしを ふきとばした。
 ピユウツ、コロ、コロ、コロ、コロ と ぼうしは とんでゆきました。
「ぼくのぼうしが とばされた。だれかつかまえて。」とこどもは おほごゑで いひましたが、のはらのまんなかで、だれもゐません。
「おもしろい、おもしろい。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
 おほかぜくんは のはらをこえ、たんぼをこえて、やまのはうに ふいてゆきました。
 すると やまのふもとに ちいさな ちいさな ひつじのこが、くさをたべてゐました。
「やあ ちいさいやつだな。一つふきとばしてやれ。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
 ひつじのこは ピユウツ、コロ、コロ、コロ、とふきとばされて、おほかぜくんが とほりすぎてしまふまで、どうしても おきあがることが できませんでした。
「おもしろい、おもしろい、ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
 おほかぜくんは やまをこえて、まちのはうへ ふいてゆきました。
「おもしろい、おもしろい。ぼくが ヒユウ と ふけば、なんでもかんでも ふきとばされてしまふ。まちでも なんでも、すぐふきとばしてしまふぞ。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
 まちのいりぐちに、おほきな いしのへいが たつてゐました。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ。おやおや、これは すこし つよさうだぞ。だが ぼくが ふけば すぐふきとばされて しまふさ。それ、ゆけ。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
 おほかぜくんは うん と ちからをいれて ふきました。だが、いしのへい は びくともしません。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ。こいつは なまいきなやつだ。よし、こんどこそ ふきとばしてくれるぞ。」
 おほかぜくんは うまれてから まだ だしたことのないやうな、ちからを だして、ふきました。
 だが どうしたことでせう。
 いしのへいは びくともしません。どこをかぜがふくか といふかほをして へいきでたつてゐます。
 おほかぜくんは すつかり はらをたてました。
 からだぢゆうに ちからを いれて、あたまをさげて、ビユウツ とばかり、いしのへいに とつかんしました。
 ビユウツ、ビユウツ。
 おほかぜくんの あたまには おほきな こぶができ、はなも ひざも すりむけました。
 だが どうしたことでせう。
 いしのへいは びくともしません。おほかぜくんは しりもちを ついたまま かんがへました。
「けふは ぼくはすこし あたまが どうかしてゐるらしい。もういたづらは やめよう。」
 そこで たちあがつて あをいうみのはうへ かえつてゆきました。
 なみのうへで ぐつすりねむつて、あしたの…

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