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あとがき
あとがき
副題――『おぢいさんのランプ』後書――
――『おじいさんのランプ』あとがき――
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第二八巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月
初出「おぢいさんのランプ」有光社、1942(昭和17)年10月
入力者菅野朋子
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-03-22 / 2014-09-16
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 はじめて世に出る童話集なので、心のなかでひやひやしてゐます。昨年、良寛さんの伝記物語「手毬と鉢の子」を出すときにも、それは私がはじめて書いた本なので、ひやひやしました。しかし、こんどはまたこんどで、別な不安があります。
 前の本は伝記物語でした。つまり、良寛さんといふりつぱなお坊さんがじつさいにゐて、その人の書き残したものや、その人について書かれたものもいろいろあつて、私はそれらのものを土台にして書けばよかつたのです。いひかへると、前の本は、良寛さんと私とのふれあひから生まれたのでした。
 ところが、この童話集は、まつたく私一人の心から生まれたものです。久助君、兵太郎君、徳一君、大作君達は、みんな私の心の中の世界に生きてゐるので、私の村にだつてそんな少年達がじつさいにゐるのではありません。さういふわけで、これは純粋な私の創作集ですから、もし少年諸君が、これらの物語を読んでちつとも面白く思はないならば、それはすつかり私のおちどになつてしまふのです。
 君達が面白いと思つてくれるかくれないか――それがいちばん心配です。わけても、私の使つた言葉のことが気にかゝります。ほかのやさしい童話ばかり読んでゐた子には、この本の言葉は、きつと少しむつかしく思へるだらうと思ひます。なるべくやさしい言葉をつかつて、君達によくわかるやうに書いたつもりですが、私はこれらの童話を書くまへ、しばらく大人の小説を書く練習をしてゐたため、どうかすると大人の言葉が、童話の方にもでてしまつたのです。
 言葉は少々君達にむつかしいのがあるかも知れませんが、書いてあることがらは――少年達の気持にしても、少年達のすることにしても、君達によくわかり、面白いはずだと、私は自分できめてゐます。
 ですから、読み出して、むつかしいなと思つても、おつぽり出さないで、お母さんか姉さんか兄さんに読んで戴いてなりとも、ともかく終まで話をきいて下さい。
 さうして最後までゆけば、君達は、こんな話きいて損しちやつた、とは、きつといはないだらうと思ひます。ひよつとすると、三月もたつてから、もういつぺん読んでみようといふ気が、起きてくるかもしれません。さうだといいのだがな、と私はひそかに思つてゐます。
 この本が出るについては、はじめに私の先輩の巽聖歌さんが、童話集を一冊まとめるやうにと私にすゝめて下さつて、有光社ともはなしをつけて下さいました。それから私の学校の生徒、太田澄さん、山崎美枝子さん、大村ひろ子さんが原稿の清書をしてくれました。插絵と装幀はすぐれた画家棟方志功さんが受けもつて下さいました。これらの方々に感謝のまごころを捧げます。
 昭和十七年九月
半田の生家にて
新美南吉



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