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シロ・クロ物語
シロ・クロものがたり
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第十六巻」 ほるぷ出版
1977(昭和52)年11月20日
初出「幼年倶楽部」1937(昭和12)年1月~6月
入力者菅野朋子
校正者門田裕志
公開 / 更新2013-05-02 / 2014-09-16
長さの目安約 42 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

一 公園の占師
 南洋のある半島の港です。太陽がてりつけて、暑い、けれどさはやかです。木がこんもりとしげり、椰子や棕櫚が、からかさのやうに葉をひろげて、いろんな花がさきほこつてゐます。
 その港町の、公園の木かげに、みごとな白い髯をはやしたお爺さんが、ぢめんに毛布をひろげて、占の店をだしてゐます。まはりには、おほぜいの人があつまつてゐます。
 このお爺さん、占といふのはつけたりで、じつは面白いことをしてみせるのです。十日に一度くらゐでてくるのですが、町の人たちはよく知つてゐて、薬屋の爺さんとか、白髯の爺さんとかいつてゐます。薬屋がしやうばいで白髯があだ名です。
「さあ/\、そんなによつてきちやいかん。」とお爺さんは人々にいひます。「これからいよ/\見とほしの術……うまくあたつたら、いくらでもよいから金をおいていくんだ。あたらなかつたら金はいらん。……おうこれ/\、シロちやんクロちやん、お前たちはひつこんでゐるんだ。」
 シロちやんにクロちやん、それは猫のことです。まつ白な猫とまつ黒な猫で、いつもお爺さんがつれてゐるのです。これがあやしいのですが、たかが猫のこと、見物人たちは気がつきません。
 そこでいよ/\見とほしの術……。お爺さんは、木の箱をとりだして、それを毛布の上にふせます。
「さあ/\、この箱の下に、なんでもよいからかくしなさい。わしが外から見とほして百ぱつ百ちゆう、ぴたりといひあてゝみせる。世にもふしぎな見とほしの術……。さあ/\誰かやつたやつた。」
 お爺さんは、くるりとうしろをむいて、そのうへ両手で目をふさぎます。
 一人の子供がでてきて、箱の下に物をかくします。見てるのは、見物人たちと、シロとクロの二ひきの猫だけです。
「もうよろしいか。」と爺さんはたづねます。
「よろしいよ。」と子供が答へます。
 お爺さんはむきなほつて、じつと箱を見つめます。そしてちらと、シロとクロの顔を見ます。シロとクロもお爺さんの顔をちらと見ます。お爺さんはまた箱を見つめます。
「ははあ、つまらないものをかくしたな。石ころが二つ。どうだ。」
 子供は頭をかいて、箱をとります。石ころが二つならんでゐます。
 見物人たちは、笑つたり、よろこんだり、ふしぎがつたりします。
 そんなことをなんどもやります。紳士がでてきて、時計をかくします。女がでてきて、ハンケチをかくします。学生がでてきて、ペンをかくします。それをお爺さんはみないひあてます。まつたく箱を見とほすのでせうか。一つとしてはづれつこありません。
 見物人たちはかつさいします。お金をぱら/\なげます。
「もうよろしい。そんなにたくさんなげなくてもよろしい。」
 お爺さんは[#「 お爺さんは」は底本では「お爺さんは」]、お金をひろひあつめます。
「こんどはおれがやつてみるよ。」
 さういつて、一人の男がでてきました。み…

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