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ラムプの夜
ランプのよる
副題――学芸会のための一幕劇
――がくげいかいのためのひとまくげき
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第二八巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「ごんぎつね」筑摩書房、1951(昭和26)年10月
入力者菅野朋子
校正者小林繁雄
公開 / 更新2012-12-22 / 2014-09-16
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

人 姉

旅人
法螺吹きの泥棒
少年

所 森の近くの一軒家。姉妹に
あてがはれた小さい勉強室

時 春になつたばかりの風の夜

(机を向ひあはせて姉と妹が、一つのスタンドの光で勉強してゐる。机上には桜草の鉢がおいてある。)
(風の音)
妹  ひどい風ね。
(汽車の音)
妹  九時の上りかしら。
姉  さうぢやないわ、八時十分の下りよ。
妹  ああ、早くお父さん達帰つていらつしやらないかなあ。
(スタンド消える)
妹  あら、停電よ。
姉  電球がきれたんぢやないか知ら。
(スイツチをひねつて見る)
妹  停電だわ。いやんなつちまふ。
姉  ぢき点くからぢつとしてらつしやい。
(間)
妹  つきやしないわ。風で電線が切れたのよ、きつと。
姉  さうか知ら。
妹  あら、何かあそこに光つてるわ青白く。
姉  どこ?
妹  ほら、窓の向かう。
姉  沼よ、あれは。月の光を反射してるのよ。いいなあ。すつてき。詩が出来さう。
妹  ちえつ。文学少女はこれだからいやだ。姉さん、お父さんのラムプつけませう。
姉  油まだあつたか知ら。
妹  きつとまだあるわ。
(姉、立つて手探りで壁伝ひにゆく。退場。)
妹  (「春が来た」を口づさむ。)
(姉、ラムプを持つて帰つて来る。)
妹  ごくらう/\。すぐわかつた?
姉  椅子にあがつてもたらなかつたからテーブルの上にあがつちやつた。もうちよつとでお父さんの大事なユキ坊の写真を蹴とばしちまふとこだった[#「だった」はママ]。内緒よ。
(その間にラムプをつける)
妹  こんな古ぼけたラムプ、いつもは何にもならないと思つてゐても、こんなときには間にあふわね。やつぱり昔のものはいい味があるわ。フランス製だつたけね。
姉  えさう。お父さんが始めての航海でマルセーユにいつたとき、そこの裏町の古道具屋で見つけたんですつて。ルヰ十四世時代のものらしいつていつてらしたわ。
(間)
姉  いつかもかうして、このラムプつけたつけね。
妹  うん、さうそ。あん時蛙が鳴いてたこと憶へてる。
姉  春の終り時分だつたのね。窓から蝶々がはいつて来てラムプのまはりとんだわ。
妹  えさう。ひらひらするもんだから、本が読めなくてわたし腹を立てたわ。そいで私が下敷で叩きおとしたら姉さんくやしがつたわね。
姉  何故あんなひどいことするのよ。あんたはああいふことがいけないのよ。バラの花だつて一ひら散るともう駄目だつてむしつてしまつたり、ラヂオでシヨパンをやつてると、いまから勉強するんだつて、プチンと切つてしまつたりするんですもの。
妹  姉さんはロマンチスト。わたしは現実家ね。わたしきつとお金ためるやうになるわ。
姉  何いつてんの馬鹿々々しい。あ、憶ひ出した。この前ラムプをつけるとき、まだユキ坊ちやんが生きてて、僕にマツチをすらしてくれつてせがんだわ。
妹…

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