『苔人形』新美南吉 ◀ えあ草紙・青空図書館（無料・縦書き）

苔人形こけにんぎょう
作品ID	45107
著者	新美南吉 Ⓦ
文字遣い	新字旧仮名
底本	「日本児童文学大系　第二八巻」　ほるぷ出版 1978（昭和53）年11月30日
初出	「チチノキ」1932（昭和7）年8月
入力者	菅野朋子
校正者	noriko saito
公開 / 更新	2011-01-29 / 2014-09-21
長さの目安	約 1 ページ（500字/頁で計算）

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本文より

苔人形は
つくられた、
木の実や苔や
白樺で。

ランプのかげに
つくられた、
シベリア樅の
森のかげ。

いろんな顔に
ゑがかれた、
ほだの消えてく
寒い夜に。

こつこつこつと
けづられた、
木こりや娘や
妻たちに。

赤いシヤツポも
つけられた、
春に売られて
行くやうに。
コペイカ銅貨に
なるように。

そして貧しい
森かげの
きこりが暮して
行くように。

苔人形は
つくられた、
吹雪の音を
ききながら。