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孝行鶉の話
こうこううずらのはなし
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一一巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「赤い鳥」1922(大正11)年2月
入力者tatsuki
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2005-09-15 / 2014-09-18
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

    一

 ある野原の薄藪の中に、母と子との二匹の鶉が巣を構へてをりました。母鶉はもう年よりなので羽が弱くて、少し遠いところには飛んで行くことが出来ませんでした。ですから巣から余り遠くないところで、小さな虫を捕つたり、粟の穂を拾つたりして、少しづゝ餌をあつめてをりました。子鶉は至つて親孝行で、毎日朝早くから巣を飛び出して、遠くへ餌をあさりに出かけ、夕方になつて帰つて参ります。そしていろ/\おいしいものを持つて来てはおつ母さんの鶉に喰べさしてをりました。
 さうするうちに秋も更けて、丁度中頃になりましたから、冬の間に喰べるものを貯へなくてはなりません。そこである日天気もいゝので、近くの野を謡ひながら、あちこち飛び廻つてをりました。鶉の声といふものはもと/\晴々として大へん威勢のいゝもので、それを聞くと気がせい/\して病気をしてゐるものでもすぐなほるほど愉快なものです。それだのにその上にこの子鶉はとりわけ美い声でそれが「チックヮラケー。」と鳴きますと、本当に深くかゝつてゐる霧もすつかり晴れてしまふやうな気持のよい、美しい声をもつてをりました。
 丁度その時、国の王様が、そこの野原に遊びに出ていらつしやいました。すると子鶉の鳴く美しい声をお聞きになりますと、家来に向つておつしやいました。
「私はまだあんないゝ声の鶉を聞いたことがない。早速あれを生捕りにしてまゐれ。お城につれて行つて飼うてつかはすから。」
 そこで家来のものどもは、すぐに馬の尾一筋づゝを結んだ網をそこいら中に張りまはしますと、可哀さうに子鶉は、すぐ捕はれてしまひました。
 王様はいゝ声の鶉が手に入つたので大よろこびです。すぐに国中で一番上手な職人を呼んで、りつぱな籠をお作らせになりました。その籠といふのが大変なものでした。まづ四隅の柱と横の桟とは黄金で作り、彫刻をして、紅宝石、碧玉、紫水晶などをはめそれに細い銀の格子が出来てをりました。籠の天井は七色の絹の糸の網で、寵を吊るす紐は皆簪の玉にする程の大きな真珠がつないでありました。
 それから又喰べるものは、皆おいしい摺り餌で、「鶉の頭」といふお役が出来て、籠の掃除やら、餌の世話など一切をいたします。朝は王様がお后と御一緒に表の御殿へおでましになると、その御坐近くの柱に籠がかけられ、夕方お寝間へお下りになると、そのお次の間に籠が置かれます。誠に結構な身の上となりました。
 併しどういふものか子鶉は、ちつとも嬉しさうなそぶりも見せなければ、物も喰べず、又一つも謡ひもせず、夜も昼も悲しさうに首を垂れて何やら考へてをりました。
 幾日たつても子鶉は、そのとほり物を喰べず、謡ひもせず、だん/\と眼が凹んで、痩せてきますので、王様は大変不思議に思召して、或時籠に近く寄つて、かうお尋ねになりました。
「鶉や/\、お前は、なぜ鳴かないのだ。私が遊山に行つたをり聞…

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