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悪魔の尾
あくまのお
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一一巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「赤い鳥」1924(大正13)年8月
入力者tatsuki
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2005-09-17 / 2014-09-18
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 それはずつと大昔のことでした。その頃は地球が出来てからまだ新しいので、人間はもちろんのこと、鳥や獣すら住まつてゐませんでした。住まつてゐるものはたゞ悪魔ばかりであつたのです。
 悪魔たちはみんな恐ろしく長い尾をもつてをりましたので、それを人間で言へば槍や刀の代りに使つて、のべつ幕なしに喧嘩をしたり、戦争をしたり、始末におへないので、世界中は治まりがつきませんでした。
 こんな悪い悪魔たちでも、やはり仲間とは一緒に住みたいと見えて、とある山の中ほどに大きな湖水のある、見晴らしのよい場所を見付けて、市街をつくつてゐました。
 けれどもこの湖からは、一筋の大きな河が流れて丁度悪魔の市の真ん中をとほるものですから、いつかしら悪魔たちは右の岸、左の岸と二派に分れましたので、とう/\喧嘩を始めました。すると両方へどこからともなく他の悪魔が来て、加勢するものですから、その喧嘩が愈々大きくなり、遂に戦争になつてしまひました。
 それからといふものは、夜昼の区別なく、春夏秋冬、年がら年中、のべつ幕なしの大戦争で、お互に敵に打勝つ手段を考へては、その魔法をつかつて戦ひました。
 腹の黒い悪魔の吐く息は、雲か霞のやうに空を立こめて、まだ生れてから若い、お天道様の美しい光りも覆ひ隠し、地上はまだ世界がひらけない前のやうに真暗になりました。おまけに唸り合ひ、啀み合ふ声は、山々谷々をゆり動かし、足踏み鳴らすその響は地震と雷とを一緒くたにしたやうで、その恐ろしさといつたらありません。
 右の岸の悪魔が大きな岩を雨か霰のやうに投げつければ、左の岸の悪魔は、まるで火山のやうに口から火焔を噴き出すといふ具合で、互に魔法のありつたけを尽して戦争しましたが、いたづらに双方が怪我をしたり、死んだりするばかりで、一向勝負はつきません。
 ところで丁度その時分、神様は余り世界が悪魔ばかりでは、殺風景だからと言つて、鳥や獣や、それから人間もこしらへて、住まはせようと、まづ、草や木の種子をお播きになつたのが、ほんの少しばかり芽を出しかけてをりました。それだのに悪魔どもがこの大戦争を始めましたおかげで、せつかくの神様の思召も無駄になつて、そんなものは皆踏みにじられ焼き枯らされてしまひました。
 けれどもこの悪魔のうちに、一疋の大きな悪魔がゐました。この悪魔は体が大きいばかりでなく、魔術を一番沢山知つてゐて、元は神様の御使ひの一等よい一人でありましたから、よく神様の御心を察することが出来ました。ですから、自分では余り戦争なんて下らないことはしないで、他の悪魔が一生懸命に生命の取遣りをしてゐるのに、お尻をそこにドツカと据ゑ込み、煙草なんか吹かして、たゞ見てゐるだけでした。
 ところが、こんなに戦争がひどくなると、大悪魔はお日様が曇るやうな大きな眉のよせ方をして、独り言を申しました。
「これはどうも賢いことでない…

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