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怪艦ウルフ号
かいかんウルフごう
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一一巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「少年倶楽部」1933(昭和8)年2月
入力者tatsuki
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2006-04-12 / 2014-09-18
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

    一

 時は欧洲大戦の半ば頃、処は浪も煮え立つやうな暑い印度洋。地中海に出動中の日本艦隊へ食糧や弾薬を運ぶ豊国丸は、独逸商業破壊艦「ウルフ号」が、印度洋に向つたといふ警報を受けたので、帝国軍艦「伊吹」の保護を求めて、しきりに無電をかけながら、西へ西へと進んでゐた。
 前部甲板の日覆の下には、とぐろを巻いたロープを椅子代りに腰掛けた二人の少年が話してゐる。水夫の服装をした少年は下村といつて当年十八歳、もう一人は中原といつて一つ下の十七歳、中原は麻の白服にカラーをつけたボーイ姿だつた。二人はこの船に一緒に乗組んでから、まだ一航海をしたつきりなのに、非常に仲好になつて、互に仕事を助け合つたり、相談したり、将来の希望を語り合つたりするのだつた。
「ウルフの畜生奴、やつぱり出て来ないな。」と、下村は幾分か失望したやうな口振で言つた。「やつぱり帝国軍艦『伊吹』が恐いのだらう。」
「出て来ないで幸だらうよ。」と、中原は年下のくせに慎重な口のきゝやうをした。「こつちは武装してゐるとは言へ、十二サンチ砲を前後二門づつ載せてゐるつきり、速力だつて、高々十五ノットだ。ところが『ウルフ号』は一万八千噸もある客船を補助巡洋艦に仕立てたんだから、十八サンチが二門に、十サンチが十門も備へつけてあるつて話だ。それに二十二ノツトも出ると言ふから、見つかつたら最後、こつちは撃沈されるか、自爆するかより外に途はない。」
「さうだな。だが、こつちだつて大砲があるんだから、むざむざやられはしないさ。一発でも二発でも打つて、かなはない時は、この船を爆沈させるだけの話だ。監督将校の堀大尉も、さつき船橋で船長にさう言つてゐた。」
 下村は自分が何でも知つてゐるやうに意気込んで話した。
 中原はしばらく黙つてゐたが、そろ/\と言つた――
「それもよからう。だが、僕なら、魚雷を使つて、あべこべに敵艦を撃沈してやるねえ。」
「えツ! 魚雷? この船に魚雷なんて無いぢやないか。」
「いや、ある。地中海の駆逐隊へ送る分が二十発ばかり積み込んである。しかも大型の二十一インチだからね。補助巡洋艦なんか、こいつを一発くらへば、木葉微塵だ。」
「さうか。けれども、そいつを発射する発射管がなからう。」
「いや、魚雷は発射管がなくたつて、使へるものだよ。僕の親父は水雷専門の兵曹長で水雷のことなら、僕も小さい時から、見たり、聞いたりして、よく知つてゐるんだ。実は僕、この間から、万一の場合には使つてやらうかと思つて、積んであるやつを調べて見たんだがね、ちやんと圧搾空気もはいつてゐるし、恐しい爆薬をつめた実用頭部も取りつけてあるんだ。僕がちよつと仕掛をすれば、すぐ走つて行くやうになつてゐるんだ。」
「さうか。そいつは手廻しがいゝな。ぢや断然やれよ。俺も手伝はあ。貴様が発射した魚雷で、巨艦『ウルフ』が海の底に深く沈むなんざア愉…

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