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愚助大和尚
ぐすけだいおしょう
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一一巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「金の星」金の星社、1925(大正14)年4月
入力者tatsuki
校正者田中敬三
公開 / 更新2007-04-08 / 2014-09-21
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 愚助は忘れん坊でありました。何を教へましても、直ぐ忘れてしまふので、お父様は愚助を馬鹿だと思ひ込んで、お寺の和尚さまに相談にまゐりました。すると和尚さまは、
「其の子は御飯を食べますか。」と、ききました。お父様は、
「はいはい、御飯は二人前ぐらゐ平気で食べます。」と、答へました。和尚様は、又、
「其の子は打てば泣きますか。」と、問ひました。お父様は笑ひながら、
「それは和尚様、なんぼ馬鹿だつて、打てば泣きますさ。鐘だつてたたけば鳴るぢやありませんか。」と、申しました。そこで和尚様は、
「宜しい、御飯を食べるのは生きてゐる証拠、打てば泣くのは、神経のある証拠。或は大和尚になるかも知れない。ここへ伴れていらつしやい。私の弟子にしてあげる。」と、申しました。
 お父様は大変喜んで、早速お家へとんで帰つて、
「愚助、御飯をお食べ。」と、申しました。其の時はまだ午後の一時頃でしたが、愚助は少うしお腹がすいてゐましたので、早速大きなお茶碗に山盛り三杯食べました。それを見て、お父様は、
「うん、大丈夫だ。」と、いひましたが、今度は少し怒つたやうな声で、
「愚助、ここへお出で。」と、申しました。
 愚助は不思議に思ひながら、お父さまの傍へ近よりますと、お父様は、いきなり愚助の頬つぺたを、ぴしやりと殴りつけました。
 木の皮みたいな、がさがさした手の平で、ひどく殴られたので、愚助はひいひいと泣きました。愚助が泣くのを見て、お父様は、
「うん、大丈夫だ。和尚様のお弟子になれるぞ。」と、申しました。
 それからお父様は、着換だの足袋だの、学校道具だのを風呂敷に包んで、愚助に脊負はせて、お寺へつれて行きました。それを見た和尚様は、にこにこ笑ひながら、
「あ、愚助か。よく来た、よく来た。」と、言つて、直ぐお弟子にして下さいました。

 愚助はお寺から学校へ通ひました。和尚様は、愚助が帰つて来ると直ぐ今日習つた所を復習してみました。ところが、一つだつて覚えてゐません。
「どうしたんだい。なんと見事に忘れてしまつたものだなあ。」と、言つて、和尚様は腹をかかへて笑ひました。
 愚助は和尚様に打たれるとばかり思つてゐましたのに、打たれなかつたばかりか、さも可笑しさうに笑はれたので、自分も何だか可笑しくなりました。
 其の晩でした。愚助は蒲団の中で眼を閉ぢてゐますと、どこかで、「気をつけ。右向け右、前へおい。」と、いふ号令の声が聞えました。
「おや、あれは先生の声だな。」と、思つて、ぢつと、其のまま眼を閉ぢてゐますと、学校の庭が眼の前にありありと見えて来ました。
 庭には生徒が並んでゐます。生徒の中には自分の愚助も並んでゐます。
「おやおや、あそこにゐるのはおれだぞ。」と、言つて愚助はぢつと見てゐますと、受持の先生は生徒をつれて教場へ入りました。
 それから先生は算術を教へました。
「あ、あ…

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