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一本足の兵隊
いっぽんあしのへいたい
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一〇巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「赤い鳥」1919(大正8)年5月
入力者tatsuki
校正者伊藤時也
公開 / 更新2006-08-29 / 2014-09-18
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

    一

 或小さなお坊ちやんが、お誕生日のお祝ひに、箱入りのおもちやをもらひました。坊ちやんは、さつそくあけて見て、
「やあ、兵たいだ/\。」と、手をたゝいてよろこびました。そしてすぐに一つ/″\とり出して、テイブルの上にならべました。それは青と赤の服を着た、小さな鉄砲をかついだ、小さな錫の兵たいでした。すつかりで、ちようど二十五人ゐました。
 これだけの兵たいは、もと、おもちや屋が或一本の錫のさじをつぶしてこしらへたので、言はゞ同じ血を分けた兄弟でした。それがみんなちやんと気をつけをして、まつ正面をにらんで立つてゐます。
 ちよつと見ると、二十五人が、寸分ちがはない同じ兵隊のやうに見えますが、しかし、よく見ると、中にたつた一人、足が一本しかない兵たいがゐます。これはこしらへるときに、一番しまひで錫が足りなかつたのでした。
 でもその兵たいは、一本足のまゝ、ほかの兵たいと同じやうに、まつすぐに立つてゐました。
 テイブルの上には、そのほかに、まだいろんなおもちやがどつさりならんでゐました。その中で人の目をひく、一ばんきれいなおもちやは、ボール紙で出来た立派な西洋館でした。その部屋/″\の窓は、ちやんと切りぬいてあつて、のぞくと部屋の中がすつかり見えました。それから正面の入口のまん前には、ひくい青い立ち木にかこまれた円い池があります。その他は鏡で出来てゐるのでした。その中には、いくつかの蝋細工の小さな白鳥が、水に影をうつしておよいでゐます。それはまつたくきれいでした。
 しかしその他よりもまだもつときれいなのは、入口の石段の上に立つてゐる女の人でした。それはボール紙を切りぬいてこしらへたのですけれど、それでも着物は上等のいゝ布で出来てゐて、くびから肩へかけて、細い青いリボンの襟かざりがつけてあります。その襟かざりは、きら/\した金紙でこしらへた、その女の人の頭ほどもあるやうな、大きなばらの花で胸のまん中に止めてあります。
 その女の人が、両腕をひろげ、片足を思ひきりたかく蹴上げて、お得意の踊ををどつてゐるのです。その上げた片足は、顔よりももつと上まではね上つてゐるので、ちよつと見ると、片足がどこにあるのか分らないくらゐでした。一本足の兵たいは、この女の足を見ると、
「おや、あの人も一本しか足がないや。なるほど、世の中にはおれ見たいな人もゐるんだね。よしよし、おれはこれから、あの人と仲好しにならう。しかし、向うはあんな立派な西洋館に住んでゐる女だ。おれのやうなこんな家ぢや、いらつしやいと言つても中々来ないだらうね。おれは二十五人も一しよに、こんな、いやな箱の中にゐるんだもの。」
 一本足の兵たいは、じぶんのお家になつてゐる、もと巻煙草のはいつてゐた箱の後に立つて、背のびをして、その女の踊を見てゐました。女の人は一本足のくせに、ころびもしないで、上手につりあ…

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