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蛇つかひ
へびつかい
作品ID45185
著者鈴木 三重吉
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一〇巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
初出「赤い鳥」1923(大正12)年7月
入力者tatsuki
校正者林幸雄
公開 / 更新2007-04-05 / 2014-09-21
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 インドだのエジプトだのといふやうな熱帯地方へいきますと、蛇使と言つて蛇にいろ/\のことをさせて見せる、わたり歩きの見世物師がゐます。たいてい五六人で組をつくつて、ありとあらゆるさま/″\の蛇のはいつた、籠や袋や箱をかついで、町から町へとめぐつて歩き、人どほりのおほい広場や空地で、人をあつめて見せるのです。人がいゝかげんにあつまりますと、蛇つかひはいづれも地びたにすわつたまゝで、中の二三人が、タンブーリンといふ、鈴のついた手太鼓をポン/\ヂャリン/\とならし出します。それと一しよに、ほかの二人は、へんな薬の草を口へ一ぱい入れこんで、ふう/\と、あたり一面へ、薄荷のやうなきついにほひのする烟をはき出します。
 そのうちに蛇つかひたちは、袋や籠をあけて蛇をとり出します。すると蛇は、たちまちしつぽの方でからだをさゝへて立ち上り、によろ/\と上体をゆすぶりながら、タンブーリンの音に合はせて、にじり歩いてをどります。見物人は、それを見ると、はつはとよろこんで、お金をなげていくのです。
 しかし、それらの蛇使は、そんなをどりを見せるばかりでなく、ときによると人の家へ出かけて戸口や窓をくん/\鼻でかぎまはしたあげく、このお家には蛇がゐるなどと言ひふらします。すると、家の人は気味がわるくなつて、では、どうぞつかまへていつてくれろと言ひます。そこで蛇つかひは、またタンブーリンをたゝき、れいの薄荷のやうなにほひのする烟をもう/\と立てゝ、シッ/\シッ/\と言つて、おびき出しますと、ふしぎにも、家の中にかくれてゐた蛇が、すぐにによろ/\とはひ出して来ます。蛇つかひはそれをつかまへてお金をもらひ、とつた蛇も袋に入れてもつていくといふやうなこともします。
 或ときアフリカのカイローといふ町に、さういふ蛇使で顔の売れた、アブト・エル・ケリムといふ男がゐました。そのケリムが、或日その町のフランスの領事館のそばをとほりかゝりました。そしてふと立ちどまつて、その建物の入口をじろ/\のぞいたり、窓を見上げたりして、しきりにくびをひねつてゐました。領事館の小使がそれを見て、どうしたのだと聞きますと、ケリムは、いやたいへんだ、この家の中には大きな毒蛇がどつさり住んでゐると言ひました。小使はびつくりしてそのことを領事のデラポールトに話しました。
 デラポールトは、もうそこにかなり永く住んでゐるのですが、これまでそこいらでむかでや、さそりといふ毒虫を見つけたことはありましたが、まだ毒蛇は、小さいのをすら、一ぴきも見たことがありません。ですから、その話をきいても、じようだんだらうと言つて、とり上げませんでした。しかし、そばにゐあはせた人たちは、だつて、もしほんとうに蛇がゐたらどうします、だれかゞ喰ひつかれでもしたら、あとで悔んでも追ッつかないでせう、ともかく、その男に一おう見ておもらひなさいと、しきりに…

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