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わがひとに与ふる哀歌
わがひとにあたうるあいか
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「詩集 わがひとに与ふる哀歌」 日本図書センター
2000(平成12)年2月25日
初出「わがひとに与ふる哀歌」1935(昭和10)年10月5日
入力者宮元淳一
校正者小林繁雄
公開 / 更新2005-06-20 / 2014-09-18
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 目次


晴れた日に
曠野の歌
私は強ひられる――
氷れる谷間
新世界のキィノー
田舎道にて
真昼の休息
帰郷者
同反歌
冷めたい場所で
海水浴
わがひとに与ふる哀歌
静かなクセニエ
咏唱
四月の風
即興
秧鶏は飛ばずに全路を歩いて来る
咏唱
有明海の思ひ出
(読人不知)
かの微笑のひとを呼ばむ
病院の患者の歌
行つて お前のその憂愁の深さのほどに
河辺の歌
漂泊
寧ろ彼らが私のけふの日を歌ふ

(読人不知)
[#改丁]

古き師と少なき友に献ず
[#改ページ]

 晴れた日に


とき偶に晴れ渡つた日に
老いた私の母が
強ひられて故郷に帰つて行つたと
私の放浪する半身 愛される人
私はお前に告げやらねばならぬ
誰もがその願ふところに
住むことが許されるのでない
遠いお前の書簡は
しばらくお前は千曲川の上流に
行きついて
四月の終るとき
取り巻いた山々やその村里の道にさヘ
一米の雪が
なほ日光の中に残り
五月を待つて
桜は咲き 裏には正しい林檎畑を見た!
と言つて寄越した
愛されるためには
お前はしかし命ぜられてある
われわれは共に幼くて居た故郷で
四月にははや縁広の帽を被つた
又キラキラとする太陽と
跣足では歩きにくい土で
到底まつ青な果実しかのぞまれぬ
変種の林檎樹を植ゑたこと!
私は言ひあてることが出来る
命ぜられてある人 私の放浪する半身
いつたい其処で
お前の懸命に信じまいとしてゐることの
何であるかを
[#改ページ]

 曠野の歌


わが死せむ美しき日のために
連嶺の夢想よ! 汝が白雪を
消さずあれ
息ぐるしい稀薄のこれの曠野に
ひと知れぬ泉をすぎ
非時の木の実熟るる
隠れたる場しよを過ぎ
われの播種く花のしるし
近づく日わが屍骸を曳かむ馬を
この道標はいざなひ還さむ
あゝかくてわが永久の帰郷を
高貴なる汝が白き光見送り
木の実照り 泉はわらひ……
わが痛き夢よこの時ぞ遂に
休らはむもの!
[#改ページ]

 私は強ひられる――


私は強ひられる この目が見る野や
雲や林間に
昔の私の恋人を歩ますることを
そして死んだ父よ 空中の何処で
噴き上げられる泉の水は
区別された一滴になるのか
私と一緒に眺めよ
孤高な思索を私に伝へた人!
草食動物がするかの楽しさうな食事を
[#改ページ]

 氷れる谷間


おのれ身悶え手を揚げて
遠い海波の威すこと!
樹上の鳥は撃ちころされ
神秘めく
きりない歌をなほも紡ぐ
憂愁に気位高く 氷り易く
一瞬に氷る谷間
脆い夏は響き去り……
にほひを途方にまごつかす
紅の花花は
(かくも気儘に!)
幽暗の底の縞目よ
わが 小児の趾に
この歩行は心地よし
逃げ後れつつ逆しまに
氷りし魚のうす青い
きんきんとした刺は
痛し! 寧ろうつくし!
[#改ページ]

 新世界のキィノー


朝鮮へ東京から転勤の途中
旧友が私…

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