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一ノ倉沢南稜
いちのくらさわなんりょう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「新編 風雪のビヴァーク」 山と溪谷社
2000(平成12)年3月20日
入力者川山隆
校正者岡山勝美
公開 / 更新2015-01-23 / 2014-12-15
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


パーティ 丹羽(正吉)、松濤
昭和十六年六月八日
土合(六・〇〇)―南稜テラス(八・一〇〜八・三〇)―一ノ倉尾根のピーク(一四・〇〇〜一四・二〇)―土合(一七・〇〇)

 テラスに揃ってキジを撃ち、ここでアンザイレンしておもむろに取り付く。緊張しているにもかかわらず、闘志が一向ないので三ツ峠の悪場に取り付いているようだ。チムニー、その上の壁、大分手間どった。南稜が上部笹原に連なる付近は、直下に烏帽子沢を俯瞰してまことに気味が悪い。それにきょうは風が強く、いくども振られて胆を冷やした。笹原に入ってザイルを解き、握り飯を噛りながら笹に身を埋めてしばらくトカゲする。
 これからの斜面は悪くないが、抜かると烏帽子沢をダイヴするので慎重に登った。平田君の落ちたピークの上で服装を整え、沖ノ耳へ向う。尾根は素敵に風が寒く、土合に着いた時には、ああ、とうとう風邪を引いてしまった。山の家泊り。翌日は雲量零の大快晴であったが、かえって怠れて、マチガ沢でトカゲして午後の汽車で帰京した。



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