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明治の戦争文学
めいじのせんそうぶんがく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「黒島傳治全集 第三巻」 筑摩書房
1970(昭和45)年8月30日
初出「明治文学講座 第四巻」木星社、1932(昭和7)年3月
入力者Nana ohbe
校正者林幸雄
公開 / 更新2009-07-19 / 2014-09-21
長さの目安約 25 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

第一章 序、戦争と明治の諸作家

 明治維新の変革以後、日本資本主義は、その軍事的であることを、最も大きな特色の一つとしながら発展した。
 それは、維新後の当初に於ては、おくれて発達した資本主義国として、既に帝国主義的段階への過渡期に入りつゝあった世界資本主義に対抗するため軍備の力が必要だった。しかし、その軍事的性質は、国民的解放の意義が失われ過ぎ去った後までも存続し、日清、日露の戦争に勝利を博すると共に、ます/\支配的地位をかため、発展した。
 明治年間、殊に、日清戦争から、日露戦争前後にかけての期間は、最も軍国主義的精神が、国内に横溢した時期だった。そして、これは明治時代の作家の、そのかなり大部分のイデオロギーにも反映せずにはいなかった。殊に、明治に於ける文学運動のなかでも歴史的に最も意義のある自然主義運動の選ばれた代表者、国木田独歩、田山花袋についてそれを見出すことが出来る。勿論、自然主義文学運動は、ブルジョア生産関係の反映として、「在るがまゝに現実を描き出すこと」「科学的精神」「客観描写」「現実曝露」等、ブルジョアジーがその生産方法の上に利用した科学の芸術的反映として、ブルジョア社会建設のために動員され、そして発展したものである。だから、そのなかに、日本ブルジョアジーの特色の一つをなす、軍事的性質が反映しているのは、怪しむに足りない。
 国木田独歩は、明治二十七八年の戦争の際、国民新聞の従軍記者として軍艦千代田に乗組んでいた。その従軍通信のはじめの方に、
「余に一個の弟あり。今国民新聞社に勤む。去んぬる十三日、相携へて京橋なる新聞社に出勤せり。弟余を顧みて曰く、秀吉の時代、義経の時代、或は又た明治の初年に逢遇せざりしを恨みしは、一、二年前のことなりしも、今にしては実に当代現今に生れたりしを喜ぶ。後世少年吾等を羨むこと幾許ぞと。余、甚だ然りと答へ、ともに奮励して大いに為すあらんことを誓ひき」と。明かに×××的意義を帯びていた日清戦争に際して、ちょうど、国民解放戦争にでも際会したるが如き歓喜をもらしている。また、威海衛の大攻撃と支那北洋艦隊の全滅を通信するにあたっては、「余は、今躍る心を抑へて、今日一日の事を誌さんとす」と、はじめている。これによって見ても、独歩が、如何に当時のブルジョアジーの軍国主義的傾向を、そのまゝ反映していたかゞ伺える。更に、日露戦争後に到っても独歩がやはり軍事的ブルジョアジーのイデオロギーに立っていたことは、「号外」「別天地」等の小説によって看取される。
 田山花袋は、日露戦争に従軍して「一兵卒」を書いた。同じ自然主義者でも、花袋は、戦争に対して、独歩とは幾分ちがった態度を取ったように、「一兵卒」一篇を見る場合感じられる。その差異については、後で触れるが、また、花袋の「第二軍従征日記」を取って見ると、やはりそこには、戦争と攻撃を詩…

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