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イーハトーボ農学校の春
いーはとーぼのうがっこうのはる
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「イーハトーボ農学校の春」 角川文庫、角川書店
1996(平成8)年3月25日
入力者ゆうき
校正者noriko saito
公開 / 更新2009-09-21 / 2014-09-21
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 太陽マジックのうたはもう青ぞらいっぱい、ひっきりなしにごうごうごうごう鳴っています。
[#挿絵]
 わたしたちは黄いろの実習服を着て、くずれかかった煉瓦の肥溜のとこへあつまりました。
 冬中いつも唇が青ざめて、がたがたふるえていた阿部時夫などが、今日はまるでいきいきした顔いろになってにかにかにかにか笑っています。ほんとうに阿部時夫なら、冬の間からだが悪かったのではなくて、シャツを一枚しかもっていなかったのです。それにせいが高いので、教室でもいちばん火に遠いこわれた戸のすきまから風のひゅうひゅう入って来る北東の隅だったのです。
 けれども今日は、こんなにそらがまっ青で、見ているとまるでわくわくするよう、かれくさも桑ばやしの黄いろの脚もまばゆいくらいです。おまけに堆肥小屋の裏の二きれの雲は立派に光っていますし、それにちかくの空ではひばりがまるで砂糖水のようにふるえて、すきとおった空気いっぱいやっているのです。もう誰だって胸中からもくもく湧いてくるうれしさに笑い出さないでいられるでしょうか。そうでなければ無理に口を横に大きくしたり、わざと額をしかめたりしてそれをごまかしているのです。
(コロナは六十三万二百
 ※[#ト音記号、48-12]‥‥‥
 ※[#ト音記号、48-13]‥‥‥
 ああきれいだ、まるでまっ赤な花火のようだよ。)
 それはリシウムの紅焔でしょう。ほんとうに光炎菩薩太陽マジックの歌はそらにも地面にもちからいっぱい、日光の小さな小さな菫や橙や赤の波といっしょに一生けん命に鳴っています。カイロ男爵だって早く上等の絹のフロックを着て明るいとこへ飛びだすがいいでしょう。
 楊の木の中でも樺の木でも、またかれくさの地下茎でも、月光いろの甘い樹液がちらちらゆれだし、早い萱草やつめくさの芽にはもう黄金いろのちいさな澱粉の粒がつうつう浮いたり沈んだりしています。
(※[#ト音記号、49-8]‥‥‥
 コロナは三十七万十九
 ※[#ト音記号、49-10]‥‥‥
 ※[#ト音記号、49-11]‥‥‥                    )
 くずれかかった煉瓦の肥溜の中にはビールのように泡がもりあがっています。さあ順番に桶に汲み込もう。そこらいっぱいこんなにひどく明るくて、ラジウムよりももっとはげしく、そしてやさしい光の波が一生けん命一生けん命ふるえているのに、いったいどんなものがきたなくてどんなものがわるいのでしょうか。もうどんどん泡があふれ出してもいいのです。青ぞらいっぱい鳴っているあのりんとした太陽マジックの歌をお聴きなさい。
(コロナは六十七万四千
 ※[#ト音記号、50-6]‥‥‥
 ※[#ト音記号、50-7]‥‥‥                    )
 さあ、ではみんなでこいつを下台の麦ばたけまで持って行こう、こっちの崖はあんまり急ですからやっぱ…

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