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隧道内の怪火
とんねるないのかいか
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」 学研M文庫、学習研究社
2003(平成15)年10月22日
入力者Hiroshi_O
校正者noriko saito
公開 / 更新2010-11-19 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 兵庫県と岡山県の境になった上郡と三石間の隧道の開鑿工事は、多くの犠牲者を出してようやく竣工しただけに、ここを通る汽車は、その車輪の音までが、
「骨がたりない、トコトコトン」
 と聞えると云って、車掌たちから恐れられていた。
 それは十数年前の夏の夜のことであった。新らしく乗りこんだ一人の車掌が、熱くてしかたがないので、展望車のデッキに出て涼んでいると、何かしら冷たいものが背筋を這うたような気がした。と、その時、すぐ眼の前の線路の上で、とろとろと青い火が燃えあがって、それがふわりと浮きあがるなり、非常な勢いで列車目がけて飛んで来た。壮い車掌は慄えあがって二等寝台車の中へ駈けこんだが、それと同時に列車がぐらぐらと大きく揺れた。



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