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北斗帖
ほくとちょう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「北海道文学全集 第11巻」 立風書房
1980(昭和55)年11月10日
入力者田中敬三
校正者土屋隆
公開 / 更新2006-09-15 / 2014-09-18
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私の短歌

 私の歌はいつも論説の二三句を並べた様にゴツゴツしたもの許りである。叙景的なものは至って少ない。一体どうした訳だろう。
 公平無私とかありのまゝにとかを常に主張する自分だのに、歌に現われた所は全くアイヌの宣伝と弁明とに他ならない。それには幾多の情実もあるが、結局現代社会の欠陥が然らしめるのだ。そして住み心地よい北海道、争闘のない世界たらしめたい念願が迸り出るからである。殊更に作る心算で個性を無視した虚偽なものは歌いたくないのだ。

はしたないアイヌだけれど日の本に
生れ合せた幸福を知る

滅び行くアイヌの為に起つアイヌ
違星北斗の瞳輝く

我はたゞアイヌであると自覚して
正しき道を踏めばよいのだ

新聞でアイヌの記事を読む毎に
切に苦しき我が思かな

今時のアイヌは純でなくなった
憧憬のコタンに悔ゆる此の頃

アイヌとして生きて死にたい願もて
アイヌ絵を描く淋しい心

天地に伸びよ 栄えよ 誠もて
アイヌの為めに気を挙げんかな

深々と更け行く夜半は我はしも
ウタリー思いて泣いてありけり
        ウタリーは同胞
ほろ/\と鳴く虫の音はウタリーを
思いて泣ける我にしあらぬか

ガッチャキの薬を売ったその金で
十一州を視察する俺
        ガッチャキは痔
昼飯も食わずに夜も尚歩く
売れない薬で旅する辛さ

世の中に薬は多くあるものを
などガッチャキの薬売るらん

ガッチャキの薬をつける術なりと
北斗の指は右に左に

売る俺も買う人も亦ガッチャキの
薬の色の赤き顔かな

売薬の行商人に化けて居る
俺の人相つく/″\と見る

「ガッチャキの薬如何」と人の居ない
峠で大きな声出して見る

ガッチャキの薬屋さんのホヤホヤだ
吠えて呉れるな黒はよい犬

「ガッチャキの薬如何」と門に立てば
せゝら笑って断られたり

田舎者の好奇心に売って行く
呼吸もやっと慣れた此の頃

よく云えば世渡り上手になって来た
悪くは云えぬ俺の悲しさ

此の次は樺太視察に行くんだよ
そう思っては海を見わたす

世の中にガッチャキ病はあるものを
などガッチャキの薬売れない

空腹を抱えて雪の峠越す
違星北斗を哀れと思う

「今頃は北斗は何処に居るだろう」
噂して居る人もあろうに

灰色の空にかくれた北斗星
北は何れと人は迷わん

行商がやたらにいやな今日の俺
金がない事が気にはなっても

無自覚と祖先罵ったそのことを
済まなかったと今にして思う

仕方なくあきらめるんだと云う心
哀れアイヌを亡ぼした心

「強いもの!」それはアイヌの名であった
昔に恥じよ 覚めよ ウタリー

勇敢を好み悲哀を愛してた
アイヌよアイヌ今何処に居る

アイヌ相手に金儲けする店だけが
大きくなってコタンさびれた

握り飯腰にぶらさげ出る朝の
コタンの空に鳴く鳶の声

岸は埋め川には橋がかかるとも…

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