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無趣味
むしゅみ
作品ID45671
著者太宰 治
文字遣い新字新仮名
底本 「太宰治全集10」 ちくま文庫、筑摩書房
1989(平成元)年6月27日
初出「新潮 第三十七年第三号」1940(昭和15)年3月1日
入力者増山一光
校正者土屋隆
公開 / 更新2006-02-18 / 2016-07-12
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 この、三鷹の奥に移り住んだのは、昨年の九月一日である。その前は、甲府の町はずれに家を借りて住んでいたのである。その家のひとつきの家賃は、六円五十銭であった。又その前は、甲州御坂峠の頂上の、茶店の二階を借りて住んでいたのである。更にその前は、荻窪の最下等の下宿屋の一室を借りて住んでいたのである。更にその前は、千葉県、船橋の町はずれに、二十四円の家を借りて住んでいたのである。どこに住んでも同じことである。格別の感慨も無い。いまの三鷹の家に就いても、訪客はさまざまの感想を述べてくれるのであるが、私は常に甚だいい加減の合槌を打っているのである。どうでも、いい事ではないか。私は、衣食住に就いては、全く趣味が無い。大いに衣食住に凝って得意顔の人は、私には、どうしてだか、ひどく滑稽に見えて仕様が無いのである。



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