えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

横綱
よこづな
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「太宰治全集10」 ちくま文庫、筑摩書房
1989(平成元)年6月27日
初出「東京新聞 第四百六十六号」1944(昭和19)年1月13日
入力者増山一光
校正者土屋隆
公開 / 更新2006-03-15 / 2016-07-12
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より




 二、三年前の、都新聞の正月版に、私は横綱男女ノ川に就いて書いたが、ことしは横綱双葉山に就いて少し書きましょう。
 私は、角力に就いては何も知らぬのであるが、それでも、横綱というものには無関心でない。或る正直な人から聞いた話であるが、双葉山という男は、必要の無いことに対しては返辞をしないそうである。お元気ですか。お寒いですね。おいそがしいでしょう。すべて必要の無い言葉である。双葉山は返辞をしないそうである。
 何とか返辞をしろ、といきり立ち腕力に訴えようとしても、相手は、双葉山である。どうも、いけない。
 或るおでんやの床の間に「忍」という一字を大きく書いた掛軸があった。あまり上手でない字であった。いずれ、へんな名士の書であろうと思い、私は軽蔑して、ふと署名のところを見ると、双葉山である。
 私は酒杯を手にして長大息を発した。この一字に依って、双葉山の十年来の私生活さえわかるような気がしたのである。横綱の忍の教えは、可憐である。



えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko