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強い賢い王様の話
つよいかしこいおうさまのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「天狗笑い」 晶文社
1978(昭和53)年4月15日
入力者田中敬三
校正者川山隆
公開 / 更新2007-02-03 / 2014-09-21
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 むかし印度のある国に、一人の王子がありました。国王からは大事に育てられ、国民からは慕われて、ゆくゆくは立派な王様になられるに違いないと、皆から望みをかけられていました。
 ところが、この王子に一つの癖がありました。それは、むやみに高い所へあがるということでした。庭で遊んでいると、大きな庭石の上に登って喜んでいますし、室の中にいると、机や卓子の上に座りこんでいます。そういう癖がひどくなると、しまいには、後庭の大きな木によじ登ったり、城壁の上に登ったりするようになりました。国王や家来たちは心配しまして、もし高いところから落ちて怪我でもされるとたいへんだというので、いろいろいってきかせましたが、王子は平気でした。ある時なんかは、城の中に飼ってある象の背中に乗って、裏門から町へでて行こうとまでしました。その象がまた、平素はごく荒っぽいのに、その時ばかりは、王子を背にのせたまま、おとなしくのそりのそりと歩いているのではありませんか。
 国王はひどく心配しまして、なにか面白い遊びごとをすすめて、王子の気を散らさせるにかぎると思いました。それで、多くの学者たちが集って、いろんな面白い遊びごとを考えだしては王子に勧めました。すると王子はこう答えました。
「高いところからまわりを見おろすのが一番面白い。世の中にこれほど面白いことはない」
 どうにも仕方がありませんでした。それで皆は相談して、その癖が止むまでしばらくの間、王子を広い庭に閉じこめることになりました。庭には木も石もなく、ただ平らな地面が高い壁に取り巻かれてるきりでした。王子は朝から夕方まで、この庭の中に閉じこめられまして、どこを見ても、自分があがれるような高いものは、なに一つありませんでした。そして、とうてい登れないほどの高い壁が四方にあるだけ、なおさらつまらなくなりました。いろんな遊びごとを皆から勧められても、王子は見向きもしませんでした。芝生の上に寝ころんで、ぼんやり日を過しました。
 ある日も、王子は芝生の上に寝ころんで、向うの高い壁をぼんやり眺めていました。壁の向うには、青々とした山の頂が覗いていました。その山の上には白い雲が浮んでいて、さらにその上遠くに、大空が円くかぶさっていました。
「あの壁の上にあがったら……、あの山にあがったら……、あの雲にあがったら……、そしてあの空の天井の上に……」
 王子は一人で空想にふけりながら、大空を眺めてるうちに、いつか、うっとりした気持になって、うつらうつら眠りかけました。
 誰かが自分を呼ぶようなので、王子はふと眼を開きました。見ると、すぐ前に一人の老人が立っていました。真黒な帽子をかぶり、真黒な服をつけ、真黒な靴をはき、手に曲りくねった杖を持っていました。顔には真白な髯が生えて、その間から大きな眼が光っていました。
 王子が眼を覚したのを見て、老人はハハハと声高…

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