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遠大なる心構
えんだいなるこころがまえ
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「坂口安吾全集 01」 筑摩書房
1999(平成11)年5月20日
初出「文学界 復活号第一巻第一号」文圃堂書店、1934(昭和9)年6月1日
入力者tatsuki
校正者noriko saito
公開 / 更新2009-05-18 / 2016-04-04
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 不平、希望、有るといへば多々ありますけれど、小さなことでごて/\言ひたくありません。私は黙つて立派な仕事をしたいのであります。けれども、私のこのなかなかに愛すべき心構えをすら脅やかさうとする悪気には(――ああ、小人故男子一生の心構えすらぐらつかされてしまふ!)憤りを覚えずにゐられない。
 私は日本文学の「雑誌的」傾向が厭であります。我々の小説を弱少ならしむるもの、一にこの傾向によるものではありますまいか。欧洲の単行本的傾向を見るにつけ羨望を感じております。とはいへ私は小説の長短に就て言ふのではない。もし小説が単行本を基礎として行はれるやうになれば、まづ第一に作家の心構えが遠大となり、つづいて、かのジヤナリストの心構えも幾分は遠大となり、つづいて文芸時評なる怪物も多少は遠大にして謙虚な心構えをもつて行はれるやうにならうかと信じます。
 月々小刻みに題材を探し、これを又月々の数行の月評によつて追ひまくられるのは、まことにしがない暮しとなげかざるをえない。
「文学界」が男子一生の心構えを遠大ならしむる為に御尽力下さるならば、小生の愉快これにすぐるものありません。



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